カード明細だけでは、購入内容と副業との関係を説明しにくい
店の書類と帳簿を組み合わせ、紙は紙、電子データは電子データのまま残す。
副業のカード払いで領収書や請求書が手元にないと、明細だけで経費にできるのか迷います。私はBASEでアパレルのネットショップを3年間運営し、初年度の途中から会計ソフトのfreeeで経費を記録していました。請求書や領収書が手に入らないときに残す資料と、紙やPDFの保存方法、保存期間を説明します。
この記事でわかること
- 所得税では、カード明細しかなくても必要経費になり得る。支出内容と副業との関係で判断する
- 領収書・請求書がなければ発行・再発行ができるか確認する。入手できなければ明細や購入履歴などを残し、副業での用途を帳簿に記録する
- 紙で受け取った書類は原則紙で、電子で受け取ったものはデータで保存する。期間は所得区分・申告方法・書類の種類で異なる
- 消費税の一般課税で仕入税額控除を受ける場合、カード明細だけでは原則足りず、店の適格請求書等が必要
カード明細だけで経費にできるか
ここでは、事業所得や業務に係る雑所得が生じる副業の支出を扱います。
所得税では、カード明細しか残っていなくても、必要経費になるかどうかは支出の内容と副業との関係で決まります。ただし、カード明細だけでは「何を買ったか」「なぜ副業に必要だったか」を説明しにくいことがあります。
必要経費は、所得を計算するときに収入から差し引く費用です。国税庁は、事業所得や雑所得の必要経費について、収入を得るために直接かかった費用や、その年に生じた業務上の費用と説明しています。私用の支出は必要経費になりません。業務と私用の両方に関係する支出は、取引記録などに基づいて業務分を明らかに区分できる金額が対象です。
カード明細、店の書類、帳簿の役割は次のように分かれます。
帳簿で使う「勘定科目」は、通信費など、取引内容に応じた分類名です。「按分」は、私用と業務用に分けるなど、使った割合に応じて金額を分けることです。
| 記録 | 主に確認できること | 単独では分かりにくいこと |
|---|---|---|
| カード会社の利用明細・請求明細 | 利用日、支払先、金額、請求額 | 商品・サービスの詳しい内容、副業で使った理由 |
| 店の領収書・レシート・請求書 | 購入内容、取引相手、取引日、金額など | 私用と兼用した割合、副業での具体的な用途 |
| 帳簿・用途メモ | 取引日、勘定科目、金額、相手方、用途、按分額など | 店が実際に何を販売し、いくら請求したかという相手方の記録 |
たとえば、ネットショップの商品発送に使う封筒をカードで買った場合、カード明細の店名と金額をレシートと照合します。レシートで品名を確かめ、帳簿や取引記録に用途を「商品発送用」と記録します。
カードを家計用と副業用に分けても、この3つの役割は変わりません。
カード払いで残す書類は、購入方法や取引状況で変わる
次の表は、あとから取引内容を説明しやすくするための組み合わせです。
| 購入方法・取引状況 | 取引を確認しやすくする主な記録 | 不足する情報を補う記録 |
|---|---|---|
| 実店舗 | 店のレシート・領収書、カード明細 | 購入品の用途メモ |
| ネット通販 | 電子領収書・請求書、カード明細 | 商品名や数量が載った注文履歴、納品書 |
| ソフト・サブスク | 領収書・請求書、カード明細 | 契約プラン、利用期間、副業で使う目的のメモ |
| 業務と私用が混在 | 領収書・請求書、カード明細 | 業務分を求めた計算式と根拠 |
| 返品・キャンセル | 元の書類、返金・取消しの明細 | 返品日、返金額、元の取引との対応メモ |
商品名が載ったレシートなら、但し書きが「お品代」だけの領収書より購入内容が分かります。「領収書」という名称だけで選ばず、取引日、相手方、金額、購入内容が分かる記録を残します。カード売上票は支払いを確認する補助資料で、購入品や副業での用途を示すものではありません。
領収書が手元にない場合
ネット通販なら、購入履歴で領収書や請求書を発行・再発行できないか、最初に確認します。実店舗なら、店へ再発行の可否を問い合わせます。
発行・再発行できない場合は、手元にあるカード明細、注文確認メール、購入履歴、納品書などをまとめ、帳簿に購入内容と副業での用途を記録します。領収書がないだけで経費から外れるわけではありませんが、支出を説明できる資料は少なくなります。
取引が高額な場合や、領収書等を取得できない取引が続く場合は、申告前に税務署や税理士へ確認します。
残っている資料と、自分で作成した用途メモは分けて保管します。
紙は原則紙で、PDFやメールは電子データで保存する
紙で受け取った領収書・請求書
紙で受け取った書類は、年・月ごとに分けて紙のまま保管すると管理しやすくなります。感熱紙の印字が薄れることに備えて、画像を残すことはできます。
ただし、保存義務のある紙の書類を廃棄して電子データに代えるには、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。スマートフォンで撮影しただけでは、スキャナ保存の要件を満たしたことにはなりません。
紙の書類を月ごとに分けるなら、A4対応・13ポケットのを使う方法もあります。例えば、1〜12月と未整理分に分けて使えます。手元の封筒やファイルで保管できている場合は、新しく購入する必要はありません。
Webやメールで受け取った明細・領収書
所得税のルールで帳簿や書類を保存する義務がある人(保存義務者)が、事業に関するカード利用明細をWebで受け取った場合、その明細データ自体が電子取引データに当たります。さらに、各取引の領収書や請求書も電子で受け取っていれば、カード明細とは別に保存します。
電子で受け取ったPDFやメールは、印刷しても原則として元のデータを残します。メール本文に取引情報がある場合はメールを、添付PDFだけに取引情報がある場合はその添付ファイルを保存します。
ネット通販のサイト上で領収書を保存しておく方法もありますが、保存期間中いつでも確認でき、電子取引データの保存要件を満たすことが前提です。アカウントを解約したり表示期間が終わったりすると、その領収書は確認できなくなります。PDFなどを手元へダウンロードしておけば、サイトの状況に左右されずに確認できます。
電子取引データの検索と訂正・削除防止を確認する
電子取引データは、画面で確認できる状態や、正当な理由のない訂正・削除を防ぐ措置などの要件に沿って保存します。検索機能も原則として必要ですが、条件によって不要になります。
個人の場合、電子取引を行った年の前々年(基準期間)の売上高が5,000万円以下で、税務職員による電子データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索機能の確保は不要です。
電子データ自体の保存や、正当な理由のない訂正・削除を防ぐ措置など、検索以外の要件まで不要になるわけではありません。
検索機能の確保が必要な人向けに、国税庁は、専用ソフトを使わずに日付・取引先・金額を同じ順序でファイル名に入れ、フォルダへ保存する方法を例示しています。
20260913_○○書店_1280.pdf
カード明細は月ごとに、店の領収書・請求書は取引ごとに保存すると対応を確認しやすくなります。たとえば、フォルダを2026年/09月/カード明細と2026年/09月/領収書・請求書に分けて保存します。購入月と請求月が異なる場合もあるため、月だけで対応を決めず、取引日・支払先・金額を照合して同じ取引の書類を結び付けます。
ファイル名をそろえることと、正当な理由のない訂正・削除を防ぐことは別の要件です。訂正・削除を防ぐ方法には、所定の期限内にタイムスタンプを付ける方法があります。タイムスタンプは、ある時点でデータが存在し、その後に変更されていないことを証明する情報です。
ほかに、訂正・削除の履歴が残るシステムでデータをやり取り・保存する方法や、作業ルールを文書にした「事務処理規程」を定めて手元に備え、運用する方法などがあります。保存方法に合う措置を確認します。
事務処理規程を使う場合は、国税庁の個人事業者向け規程例を参考にできます。
月に一度、明細・書類・帳簿を照合する
確定申告の直前に1年分を探すより、カードの請求額が確定した月に照合すると、不足している書類を購入履歴から取得しやすくなります。
- その月の確定明細を、カード会社からPDFやCSVで取得して保存する。
- 副業の支払いごとに、カード明細と店の領収書・請求書・注文履歴を照らし合わせる。
- 私用の取引、用途が分からない取引、返品・返金を分ける。
- 取引日、相手方、金額、勘定科目、購入内容、副業での用途を帳簿へ記録する。
- 紙と電子データをそれぞれの方法で保存し、まだ取得していない書類を一覧にする。
- 銀行口座から引き落とされたカード代と、カード会社の請求額を照合する。
カードと銀行口座の両方を会計ソフトへ連携している場合は、同じ支出をカード利用時と口座引落時に二重で経費として登録しないよう注意が要ります。口座からのカード代の引き落としは、すでにカードで支払った金額を精算するものです。
また、カードの利用日や口座引落日だけで、どの年の必要経費になるかが決まるわけではありません。必要経費は、原則としてその年に債務が確定した金額を、その年の経費として記録(計上)します。
「債務が確定」とは、支払う義務が生じ、商品を受け取るなど支払いの原因となる事実があり、金額を合理的に計算できる状態をいいます。年をまたぐ取引や前払いは、サービスの提供時期や契約内容を確認します。
例えば、12月20日に発送用の封筒を3,300円で購入し、その年の発送で全て使い切ったとします。カード代の引落しは、翌年1月です。
一定の条件で、収入や費用を実際のお金の出入りに基づいて記録する「現金主義の特例」があります。この例ではその特例を使わず、年内に債務が確定していれば、その年の経費として記録します。
レシートを該当するカード利用明細の行と対応させ、翌年1月の引落しはカード会社の請求額と照合します。引落しは記録済みの利用分の精算のため、再び経費にはしません。
明細の自動取込みは、支払先や金額を入力する手間を減らせます。ただし、取り込んだ明細を記帳するときは、副業に必要だったか、私用分が混ざっていないか、どの年の必要経費になるかを確かめます。
明細の入力を減らしたい人へ
会計ソフトには、私が副業で使ったのほか、もあります。どちらを使っても、領収書・請求書の保存と、副業の必要経費に該当するかの判断は別に必要です。
保存期間は、所得区分と申告方法で異なる
領収書の保存期間は、一律7年ではありません。事業所得では、青色申告と白色申告、帳簿と書類の種類によって5年または7年に分かれます。
青色申告は、税務署の承認を受け、一定の帳簿を付け、その記録に基づいて行う申告方法です。事業所得を青色申告しない場合は、白色申告です。
事業所得を青色申告する場合
| 保存するもの | 保存期間 |
|---|---|
| 仕訳帳・総勘定元帳・経費帳など | 7年 |
| 損益計算書・貸借対照表・棚卸表など | 7年 |
| 領収書・預金通帳などの現金預金取引等関係書類 | 原則7年 |
| 請求書・見積書・契約書・納品書など、上記以外の取引書類 | 5年 |
前々年分の事業所得と不動産所得の金額が300万円以下の場合、現金預金取引等関係書類の保存期間は5年です。この300万円は、売上ではなく所得の金額です。
私が青色申告で実際に残した書類と決算書の数字は、「経費と控除で売上814万が所得29万に」にまとめています。
事業所得を白色申告する場合
| 保存するもの | 保存期間 |
|---|---|
| 収入・必要経費を記録する、法律上必要な帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 法定帳簿以外に、業務のために作った帳簿(任意帳簿) | 5年 |
| 棚卸表、請求書、納品書、領収書など | 5年 |
業務に係る雑所得の場合
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類を5年間保存します。事業所得の青色申告は「所得金額300万円以下」、雑所得は「収入金額300万円超」で判定します。同じ300万円でも、所得か収入か、以下か超かが異なります。
前々年分の収入金額が300万円以下なら、この雑所得の規定による5年保存の対象外です。ただし、必要経費の内容を説明する記録まで不要になるという意味ではありません。申告額を再確認できるよう、帳簿に相当する取引記録と根拠資料を残します。消費税の課税事業者や、ほかの所得で帳簿書類の保存義務がある場合は、それぞれの要件も別に確認します。
保存期間の数え方と、まとめて保管する際の注意点
所得税の保存期間は、帳簿ならその帳簿の記録期間が終わった年(閉鎖した年)の翌年3月15日の翌日から数えます。書類なら、作成または受け取った年の翌年3月15日の翌日から数えます。
書類ごとに廃棄時期を分けたくない場合は、カード明細・領収書・請求書を年ごとにまとめ、長いほうの7年に合わせて残す方法もあります。これは管理を簡単にするための方法で、すべての書類に7年間の保存義務があるという意味ではありません。
なお、消費税の一般課税で仕入税額控除を受ける場合は、所得税上の保存期間にかかわらず、帳簿と請求書等を原則7年間保存します。6年目と7年目は、帳簿または請求書等のいずれか一方を保存する扱いです。
カード会社の明細は、消費税の仕入税額控除に使うインボイスではない
この章は、消費税を「一般課税」で申告し、仕入税額控除を受ける人向けです。一般課税では、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかる消費税額を一定の要件のもとで差し引きます。この差し引きが「仕入税額控除」です。所得税の必要経費と、消費税の仕入税額控除は別の判定です。
国税庁は、カード会社が発行する請求明細について、販売店やサービス提供者が作成した書類ではなく、消費税法上の請求書等には該当しないと説明しています。カード会社の明細だけを保存しても、原則として仕入税額控除の要件は満たしません。販売店やサービス提供者から受け取った適格請求書等を保存します。適格請求書(インボイス)は、登録を受けた事業者が税率や消費税額などの必要事項を記載して発行する請求書などです。
書類の名前が「領収書」「レシート」「納品書」でも、必要な記載事項を満たせば適格請求書または適格簡易請求書になり得ます。名称だけでなく、販売店の登録番号、取引日、内容、税率ごとの金額など、必要事項を確認します。
| 税金 | カード明細の位置づけ |
|---|---|
| 所得税 | 支払記録の一つ。副業との関係、購入内容、私用分の除外などと合わせて必要経費を判断する |
| 消費税 | カード会社の請求明細は、原則として仕入税額控除に必要な適格請求書等には当たらない |
消費税には、一定の取引について帳簿だけの保存で仕入税額控除が認められる例外があり、期間限定の少額特例もあります。簡易課税制度を使う場合も計算方法が異なります。いずれの場合も、カード会社の明細は店のインボイスの代わりになりません。
インボイスがないことだけで、所得税の必要経費に該当しなくなるわけではありません。所得税では副業との関係を、消費税では仕入税額控除の要件を、それぞれ確認します。
私用の支払いが混ざったら、全額を経費にしない
家計用カードで払っても、副業に必要な支出であれば必要経費になります。一方、副業用と決めたカードで私物を買っても、それだけで必要経費にはなりません。
- 私用だけの支出は必要経費から外す。
- 一つのレシートに業務用と私用の商品がある場合は、業務用の商品と金額が分かるように印を付け、計算を残す。
- パソコンや自宅のネット回線などを私用と兼用する場合は、実際の利用状況から業務分を按分し、計算式と根拠を残す。
- 会計ソフトに登録したカードの残高を管理する場合は、私用分も所定の方法で記録する。
例えばfreeeでは、私用分を勘定科目「事業主貸」で記録するか、「プライベートな出金として処理」を選びます。明細を無視したり未登録のままにしたりすると、帳簿上の残高と実際の残高が合わなくなります。
按分の割合は、カードの利用回数や名義ではなく、対象となる物やサービスを副業でどの程度使ったかで考えます。計算例は、副業用パソコンとネット代の経費処理で説明しています。
私はネットショップを運営していたとき、家計用とは別のカードを副業用にしていました。専用のカードにすると、副業の取引を明細から探しやすくなります。分ける時期と引き落とし口座は、副業用の銀行口座とカードを分ける方法で扱っています。
よくある質問
カード明細と領収書は、両方残したほうがよいですか?
両方を対応させて残すと、支払った事実と購入内容を確認しやすくなります。所得税の保存義務者がカード明細データと各取引の電子領収書・請求書をそれぞれ受け取った場合は、カード明細データとは別に、個々の取引データも保存します。
領収書がないと、カード払いを経費にできませんか?
領収書がないだけで、経費にできないと決まるわけではありません。発行・再発行できないか確認したうえで、カード明細、注文確認メール、購入履歴、納品書など、残っている資料を組み合わせます。帳簿には購入内容と副業での用途を記録します。
ただし、資料が少ないほど支出の説明は難しくなるため、高額な取引や、領収書等を取得できない取引が続く場合は、申告前に税務署や税理士へ確認します。
Web明細やPDFを印刷すれば、電子データは消してよいですか?
原則として消せません。税法上の保存義務者が電子取引で受け取った明細・領収書・請求書は、電子データを保存します。印刷した紙を補助資料として一緒に残すことはできます。
紙の領収書は、スマートフォンで撮れば捨てられますか?
保存義務のある紙の領収書は、スマートフォンで撮影しただけでは原本を廃棄できません。電子データに代える場合は、入力期限、解像度、改ざん防止、検索など、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。要件を満たしているか確かめられない場合は、紙の原本を残します。
家計用のカードで払った経費は認められませんか?
カードの種類だけでは決まりません。副業に必要な支出であることを資料と帳簿で確認し、私用分を除きます。税務上の扱いとは別に、カード会社の利用規約で事業目的の利用条件も確認します。
ビジネスカードを作る必要はありますか?
税務上、ビジネスカードは必須ではありません。明細を見分けやすくするのが目的なら、手持ちのカードを用途別に使い分ける方法もあります。ただし、カード会社の利用規約、引き落とし口座、必要な利用枠や追加カードの有無は商品ごとに確認します。商品を比べる場合は、クレジットカードの選び方で判断基準を確認できます。
まとめ
カード明細は、利用日・支払先・金額を確認する資料です。ただし、カードで支払ったという事実だけで必要経費になるわけではありません。店の領収書・請求書等で購入内容を確認し、帳簿やメモに副業で使った理由と私用分の除外・按分を残します。
毎月、カード明細を保存して各取引に店の書類を対応させておくと、確定申告の直前に1年分を探し直す負担を減らせます。電子で受け取った明細や領収書はデータのまま、紙で受け取った書類は紙のまま残すのが基本です。保存義務のある紙の原本を電子データに代えて廃棄する場合は、スキャナ保存の要件を先に確認します。
※私は税理士ではありません。経費にできるかどうかや書類の保存方法は、取引の内容や申告の方法によって変わります。個別の判断に迷うときは、税務署や税理士に相談してください。
2026年10月1日に確認。

