副業に必要な支出から私用分を除き、計算根拠を残す
パソコンは取得価額で処理を決め、その年の金額に業務使用割合を掛ける。
自宅のパソコンやネット回線を副業にも使う場合、経費にできる金額は、仕事との関係や使い方で変わります。この記事は、物販・ブログ・委託業務など、給与以外の副業をしている会社員が対象です。費目別の按分基準やパソコン代・ネット代の計算例から、いくら経費に計上するか、何を根拠として残すかを判断できます。
この記事でわかること
- 物販・委託業務など給与以外の副業は、必要経費を漏らさず入れ、私的な支出を除く
- 私用と兼ねる支出は、一律の割合にせず、費目ごとの利用実態から副業で使った分を計算する
- パソコンは私用分を引く前の取得価額や取得時期などで処理方法を確認し、その年の業務使用分を経費にする
- 申告書が受理されても事後の内容確認はあり得るため、売上・経費の資料と計算根拠を残す
損する人=副業の経費を入れていない
副業のための支出でも、私用分は経費から除きます。また、その年に全額を経費にできない資産もあります。
建物やパソコンなどの購入にかかった金額を、税法で定められた年数や方法に従って各年の経費に分けるのが、減価償却です。支払ったものを費目ごとに拾い、副業に必要だった部分と、計上する年・金額を確かめます。
私は税務窓口で、相談者と一緒に確定申告書を作っていました。その中で、本来計上できる経費を申告に入れていない人を見かけました。
私用と兼ねる支出は、副業で使った部分を明確に区分できる場合、その分を必要経費にできます。以下は、計上する金額を確認したい費目の例です。
| 費目 | 経費にできる分 | 例・補足 |
|---|---|---|
| スマホ代 | 副業で使う割合の分 | 月6,000円で3割なら月1,800円・年21,600円 |
| 家賃 | 作業スペースの面積などの割合の分 | 持ち家は家賃のかわりに建物の減価償却費を按分(土地は対象外) |
| 光熱費 | 副業で使う割合の分 | 按分の考え方はスマホ代と同じ |
| 商品の仕入れ | 年初・年末在庫を反映した売上原価 | 年初棚卸高+年間仕入高-年末棚卸高 |
| 購入者への発送送料 | 副業の販売に必要な分 | 商品を購入者へ発送するために負担した送料 |
| 梱包材 | 年初・年末の未使用分を反映した消耗品費 | 年初棚卸高+年間購入高-年末棚卸高 |
| ネット回線 | 副業で使う割合の分 | ― |
| 振込手数料・書籍・消耗品 | 副業のための分は全額 | 売上の振込手数料、参考書、文房具やインク |
商品の仕入れは、支払った年に全額を必要経費にするとは限りません。仕入れのために直接かかった送料なども、商品の仕入原価に含めます。
在庫の数量と金額を確かめる作業を棚卸しといい、表の年初棚卸高・年末棚卸高は、それぞれの時点の在庫の金額です。年初の在庫の金額に年間の仕入金額を加え、年末に売れ残った商品の金額を引くと、その年に売れた商品にかかった費用(売上原価)を計算できます。
梱包材の消耗品費も、原則として年初と年末の未使用分を反映して計算します。年末に未使用の包装材料も棚卸しの対象ですが、通常の年に比べて特に増えていない消耗品などは、棚卸しを省略できるとされています。
経費を10万円計上し忘れ、その10万円に所得税5%・住民税10%がかかると仮定すると、税額は合計で約1万5,000円多くなる計算です。
副業で経費にできるもの・できないものと家事按分
| 確認する順番 | 判断すること | 残すもの |
|---|---|---|
| 業務との関係 | 何の売上・作業のために使ったか。私用だけの支出は除く | 支出内容、取引先や作業との関係 |
| 私用との区分 | 兼用なら、副業に使った部分を明確に分けられるか | 利用時間・面積・走行距離など、基準と計算式 |
| 計上する年と金額 | 購入時に全額を計上できるか、在庫や減価償却の計算が必要か | 取得日・使用開始日・棚卸し・処理方法の記録 |
経費にできるかは、実際に副業のために必要だった支出かどうかで判断します。副業と関係のない私的な支出は、領収書があっても経費になりません。
たとえばライバー(ライブ配信をする人)のスマホ代や配信用の衣装代も、使い方によって経費になるかが変わります。配信用の衣装のように私生活では着ないと説明できるものは経費にできますが、普段も着られる服は、業務に使った部分を明らかに区分できないと経費になりません。
私用と兼ねる支出は、業務で使った分だけ経費にする
私用と兼ねるものを、副業で使った分だけ経費にする計算を家事按分といいます。割合に一律の正解はありません。費目ごとの実際の利用状況に即し、副業に必要な部分を明確に区分できる基準で計算します。
費目ごとの分け方の例
| 費目 | 基準の例 | 決め方の例 |
|---|---|---|
| スマホ代・ネット回線 | 使う時間 | 1日のうち副業に使う時間から割合を出す |
| 家賃・持ち家の減価償却費 | 面積 | 作業スペースの面積÷家全体の面積 |
| 電気代 | 面積か時間 | 作業スペースの面積、または使う時間 |
| 車・ガソリン代 | 走行距離 | 副業で走った距離÷総走行距離 |
同じ利用状況が続く間は同じ基準を使い、利用状況が変わったときは、割合や基準を見直して計算根拠を残します。
白色申告の「50%」は固定の按分割合ではない
事業所得などを申告する方法には、青色申告と白色申告があります。青色申告は、税務署の承認を受け、決められた方法で帳簿を付けるなどの条件を満たすと、税の計算上の優遇を受けられる制度です。青色申告を使わない申告を白色申告といいます。
白色申告では、私用と兼ねる支出について、原則として業務に使う部分が50%を超えるかどうかで判定するとされています。ただし、国税庁の通達には、50%以下でも業務に必要な部分を明らかに区分できるなら、その分を必要経費にできると書かれています。
青色申告では、取引の記録にもとづき、副業に直接必要だったと分かる部分が必要経費になります。どちらの場合も、「50%ならよい」と固定せず、実際の利用状況から割合を計算します。
パソコンは按分前の取得価額で処理を決める
パソコンは、私用分を引く前の取得価額で処理方法を決めます。選んだ方法で求めたその年の金額に、業務使用割合を掛けます。
以下は、事業所得または業務に係る雑所得になる副業で使う場合の説明です。アルバイトなどの給与所得では、自分で購入したパソコン代を同じ方法で必要経費にはしません。
買う前の性能や回線の選び方は「副業のパソコンと回線を選ぶ」で説明しています。
取得価額は、パソコンの購入代金に、購入手数料や運送費など、取得して使い始めるために直接かかった費用を加えた金額が基本です。
10万円・20万円・40万円の判定には、消費税を含めて売上や経費を記録する税込経理なら税込額、消費税を分けて記録する税抜経理なら税抜額を使います。消費税を納める義務が免除されている免税事業者は税込経理となるため、税込額で判定します。
私用と兼用する場合も、先に私用分を引くのではなく、通常1単位として取引されるパソコン全体の按分前の取得価額で価格帯を判定します。パソコン本体と周辺機器も自由に分割せず、セット内容、請求書の内訳、各機器が独立して機能するかを確認します。
新品のパソコンを2026年4月1日以後に取得し、副業で使い始める場合の主な処理方法は次のとおりです。
| 1台の取得価額 | 主な処理方法 |
|---|---|
| 10万円未満 | 業務で使い始めた年に、業務使用分を必要経費にする |
| 10万円以上20万円未満 | 通常の減価償却/一括償却資産(3年)/対象者のみ少額減価償却資産の特例 |
| 20万円以上40万円未満 | 通常の減価償却/対象者のみ少額減価償却資産の特例 |
| 40万円以上 | 原則として通常の減価償却 |
10万円ちょうどは「10万円未満」に含まれません。20万円ちょうども、一括償却資産の「20万円未満」には含まれません。
減価償却の計算に使う、税法で定められた年数を法定耐用年数といいます。通常の減価償却をする場合、サーバー用を除くパーソナルコンピュータの法定耐用年数は4年です。ただし、使い始めた年は使用月数を反映するため、購入額を単純に4等分するとは限りません。
一括償却資産は、使用開始月による月割りをせず、取得価額の3分の1ずつを3年間で計算します。
少額減価償却資産の特例は、対象者・取得日・上限を確認する
少額減価償却資産の特例は、対象資産の取得価額を、業務で使い始めた年にまとめて必要経費にできる制度です。
対象は、一定の中小事業者に該当する青色申告者が、不動産所得・事業所得・山林所得を得る業務に使う資産です。業務に係る雑所得には使えません。私用と兼ねる場合は、業務で使った分だけを必要経費にします。
2026年4月1日以後に取得する資産は、10万円以上40万円未満が対象です。2026年3月31日以前の取得分は30万円未満が上限で、現行制度の取得期限は2029年3月31日です。
対象資産の取得価額の合計は、通常の1年間なら300万円までです。年の途中で業務を開始または廃止した場合は、上限を月割りします。取得等をしただけでは適用されず、対象期間内に業務で使い、確定申告書へ明細を添付するなどの要件もあります。
15万円のパソコンを副業で50%使う場合
15万円のパソコンを副業と私用で半分ずつ使っても、最初から「15万円×50%=7万5,000円」として10万円未満の資産にはしません。
- 価格帯を判定する按分前の取得価額15万円で、10万円以上20万円未満の区分と判断します。
- 処理方法を決める通常の減価償却、一括償却資産、対象者なら少額減価償却資産の特例から選びます。
- 業務分を計算する選んだ方法で求めたその年の金額に、業務使用割合50%を掛けます。
2027年1月に取得して使い始め、業務使用割合が年間を通して50%で変わらないと仮定した場合、初年の2027年分は次のとおりです。
定額法は、減価償却費が原則として毎年同じ額になるように計算する方法です。この例では、耐用年数4年の償却率0.250(25%)を使います。
通常の定額法:150,000円×0.250×50%=18,750円
一括償却資産:150,000円×1/3×50%=25,000円
少額減価償却資産の特例:150,000円×50%=75,000円
少額減価償却資産の特例は、上記の対象者と適用要件を満たす場合に限ります。また、75,000円を必要経費にしても、税金が75,000円減るわけではありません。必要経費は、所得を計算するときに収入から差し引く金額です。
以前から私用していたパソコンを副業へ転用する場合は、元の取得価額、私用していた期間、副業で使い始めた日などを基に別の計算が必要になることがあります。
ネット代は本人と家族の利用分を含めて按分する
副業のために契約し、私用や家族利用がない専用回線なら、業務との関係を示したうえで全額を必要経費にできる場合があります。契約名義だけでなく、実際の利用状況で判断します。
自宅の回線を家族と共用している場合は、月額料金のうち業務利用分を家事按分します。たとえば、代表的な1か月について、副業40時間、本人の私用60時間、家族利用100時間の合計200時間だった場合は、次のように計算します。
業務使用割合:40時間÷200時間=20%
月額7,000円×20%=1,400円
料金と割合が12か月同じ場合:1,400円×12か月=年16,800円
この20%は計算例であり、推奨割合ではありません。勤務日数だけで決めると、同じ日の私用や家族の利用が計算から抜けることがあります。料金や利用状況が変わった場合は期間を分け、割合を変更した時期と理由も残します。
パソコンの業務使用割合が50%でも、ネット代に同じ割合を使えるとは限りません。それぞれの利用実態から計算します。
危ない人=根拠を示せない人
受付で申告書が受理されても、記載した内容が正しいことの証明にはなりません。後日、税務署から申告内容について確認を受けることがあります。
窓口で受け付けた申告のうち、あとで根拠を説明できるようにしておいたほうがよいと感じたケースがありました。
- 高額な支出と業務との関係を説明できない場合
購入したものを何の業務に使ったか、売上や活動内容との関係が分かる資料や記録を残します。 - 年末の支出内容や計上時期を説明できない場合
購入内容や業務との関係に加え、取得日、使用開始日など、どの年の経費にしたかを判断した根拠を残します。 - 私用と兼用のものを全額経費にしている場合
私用分を区分できないと、全額を経費として認められない場合があります。 - レシートや帳簿が残っていない場合
記憶でまとめた数字は、あとから根拠を示す資料になりません。
これは私が窓口で受けた印象で、税務署が調査先を選ぶ基準ではありません。
売上・経費と計算根拠を残す
申告額は、売上と経費の両方から確認できるようにします。領収書や請求書は支払額を示しますが、取得価額の判定、選んだ処理方法、私用と副業の割合までは示しません。支払資料と計算メモを対応させて残します。
| 確認すること | 残す記録 |
|---|---|
| 売上 | 売上明細、請求書、取引履歴、入金記録 |
| 商品の仕入れ・在庫 | 仕入先の請求書・領収書、支払記録、棚卸表、年末の数量と金額の計算 |
| 家事按分 | 契約内容や料金明細、利用時間・面積・走行距離などの記録、計算式、割合を変更した日と理由 |
| パソコン | 注文書・請求書・領収書、支払記録、型番とセット内容、取得日、業務で使い始めた日、取得価額、選んだ処理方法、減価償却の計算、業務使用割合と根拠 |
| ネット代 | 契約内容、月額明細、支払記録、専用・共用の別、業務使用割合の計算式、利用時間や家族利用などの根拠、割合を変更した日と理由 |
帳簿や書類の保存義務がある人が、メールやウェブ上で請求書・領収書などを送ったり受け取ったりした場合は、紙に印刷するだけで終わらせず、取引情報の電子データを要件に沿って保存します。紙で受け渡した書類まで電子化が必須という意味ではありません。カード明細、領収書、請求書や電子データの保存方法は、「経費はカード明細だけでいい?」にまとめています。
もし税務署から問われて経費が認められなければ、その分の税金を追加で払います。申告額の不足などに対する加算税や、納付の遅れた日数に応じた延滞税が上乗せされることもあります。根拠のある範囲で申告しておけば、こうしたときに説明できます。
住民税への反映業務で確認していたこと
私が担当した住民税への反映業務では、延べ約1万件の申告について金額の取込みや矛盾を確認していました。按分の割合そのものを見たことはありません。割合を理由に税務署へ連絡したこともありません。
市区町村は、申告された金額を住民税の課税に反映します。
住民税の通知に按分の割合が記載されるわけではありません。ただし、私が担当した業務で確認していなかったことや、市区町村から何も言われなかったことは、その割合が税務上認められたという意味にはなりません。市区町村も、申告内容に不明点があれば、質問や資料の提出を求めることがあります。
私のネットショップ運営と確定申告の経験
レディースアパレルのネットショップを3年運営し、いちばん売れた年の売上は814万円でした。青色申告の優遇を受けるため、会計ソフトで記帳し、電子申告(e-Tax)で提出してきました。
実際の申告方法や経費の内訳は、決算書つきの実例記事で公開しています。納める税金をいくら残しておくかは、「副業の税金は何割残せばいい?」で説明しています。
按分・取引記録をそろえて記帳する
- 按分を根拠に沿って決める
私用と兼用しているものは、実際に副業で使った割合に応じて経費にします。 - 副業の取引を追えるようにする
今ある口座やカードを使う場合も、副業の入金と支払いを記録し、明細や領収書と照合できるようにします。取引が増えて追いにくい場合は、用途を分ける方法もあります。口座を分ける判断と手順は、「副業の口座はいつ分ける?」にまとめています。 - 取引を月ごとに記帳する
明細や領収書をもとに売上・経費を記帳し、月ごとに集計します。会計ソフトを使う場合も、経費の区分や年末在庫、使用割合などは自分で確認します。
明細の入力や集計、申告書の作成に手間がかかる場合は、会計ソフトで負担を減らせます。入力や設定だけで、経費の扱いが自動的に正しくなるわけではありません。
私はfreeeを使い始めたころ、操作に迷いました。定例取引は一度設定すると、その後は自動で反映されました。一方、初回の設定や年度末処理、減価償却などは、ネットやfreee内のヒントで調べて判断していました。
マネーフォワード クラウド確定申告も、銀行・カード明細の取込みと申告書の作成、電子申告に対応しています。導入を検討するなら、明細の入力方法や必要な機能・料金を比べて選べます。同サービスのアプリで事業所得を電子申告するには、有料プランの契約が必要です。
freee会計の導入案内を見る副業の所得は「雑所得」か「事業所得」か
確定申告書では、副業の所得を種類ごとに分けて書きます。ネットショップやせどり、ライターなど、給与以外で得た副業の所得は、「雑所得」か「事業所得」のどちらかになることがほとんどです。
事業所得かどうかは、その活動が世間一般から見て「事業」といえる程度かどうかで判断します。利益を得る目的があるか、継続して行っているか、規模はどの程度かなどを合わせて見るため、帳簿書類を保存しているだけで自動的に事業所得になるわけではありません。取引を記録した帳簿書類を保存していない場合は、収入が300万円を超え、事業所得と認められる事実がある場合を除き、業務に係る雑所得に区分されます。
雑所得か事業所得かによって、使える制度が変わります。事業所得で青色申告をするには、期限までに青色申告承認申請書を提出します。新たに事業を始めた人は、開業届も別の手続として提出します。最大65万円の控除を受け、赤字を繰り越せるのは、青色申告だけです(令和9年分からは、優良な電子帳簿の要件などを満たすと75万円の区分も加わります)。
2027年分以後の青色申告特別控除の要件も確認します。75万円の控除は2026年分には適用されません。
この区分の判断は、市役所の窓口ではできません(所得税は税務署の管轄です)。迷ったら、税務署か税理士に相談してください。
経費を引いた所得から、確定申告が必要か判断する
源泉徴収は、勤務先などが給与や報酬から所得税などをあらかじめ差し引いて納める仕組みです。年末調整では、勤務先が対象となる給与の1年分の所得税などを計算し、天引き額との差を精算します。
ここでは、給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象になっている会社員を想定します。年末調整が済んでおり、給与収入が年2,000万円以下であることも条件です。
給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が年20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。ただし、申告して税金が還付される場合など、この申告義務の対象から除かれる人もいます。
副業の種類と金額で分かれます
合計20万円超
原則、所得税の確定申告が必要
合計20万円以下
ほかに申告理由がなければ所得税は原則不要
住民税申告は原則必要
年末調整されなかった給与収入と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円超なら原則必要(条件・例外あり)
給与以外の副業では、売上ではなく所得金額の合計(売上−必要経費など)で、20万円を超えるかを判定します。給与の副業では、年末調整されなかった給与の収入金額を使います。
業務委託や物販など給与以外の副業では、所得は基本的に「売上−必要経費」で計算します。たとえば売上30万円でも、経費が15万円かかっていれば所得は15万円なので、ほかに確定申告をする理由がなければ、所得税の申告は原則不要です。窓口では、売上だけを見て確定申告が必要だと思っている人も多くいました。
住民税は別のルール
ただし、この「20万円以下なら申告不要」は所得税のルールで、住民税にはありません。所得が20万円以下でも、住民税は原則として申告が必要です。例外として、副業がアルバイトなどの給与で、勤め先が給与支払報告書を出していれば、市区町村に金額が届くので要りません。
なお、所得税の確定申告をすれば、その内容が市区町村にも届くので、住民税の申告も兼ねられます。別々に出す必要はありません。住民税の申告だけが要るのは、確定申告をしないときです。対象になる人と提出方法は、「住民税の申告だけ必要な人は?」で説明しています。
医療費控除などで確定申告をする年
20万円以下なら申告不要になるのは、ほかに確定申告をする理由がない場合です。医療費控除やふるさと納税の申告などで確定申告をする年は、20万円以下の副業所得もあわせて記載する必要があります。
このとき、ふるさと納税のワンストップ特例も無効になります。寄附金控除を書き忘れるとその分の控除を受けられません。条件と書き方は「ワンストップ特例が無効に」で説明しています。
経費とは別に確認する控除と源泉徴収
必要経費は、売上などから所得を計算するときに差し引く金額です。所得控除は、税額を計算する前の所得から、家族構成や保険料などの条件に応じて差し引く金額です。扶養控除などの所得控除や、報酬から先に引かれた源泉徴収税額は別に確認し、申告書へ反映します。
報酬から先に税金が引かれている人もいます。原稿料やデザイン料などを業務委託で受け取る場合、取引先が10.21%を源泉徴収していることがあります。これは前払いなので、確定申告をすると戻ってくることがあります。
支払調書は、取引先が報酬額や源泉徴収税額などを記載する書類です。本人への交付は義務ではないため、届かないときは請求書や入金明細で源泉徴収額を確認します。窓口でも、報酬から引かれた税額を申告に含め、納めすぎた分の還付を受ける人がいました。
申告のやり方と、そろえる書類
提出までにやることは3つです。国税庁の案内では、2026年分の所得税の申告期限は2027年3月15日、税務署窓口での相談・受付は2027年2月16日からです。2026年分の還付申告は2027年1月1日から提出できますが、青色申告特別控除など、期限内申告が条件となる制度ではその期限を守る必要があります。
- 書類をそろえる
本業の勤務先が発行する、給与収入や控除・税額などを記載した源泉徴収票、副業の売上明細・請求書・取引履歴・入金記録、経費の領収書やメモ、控除証明書(生命保険料など)、マイナンバーの分かるもの、還付金の振込先口座です。副業の報酬から源泉徴収されているなら、その金額が分かる支払調書か、請求書と入金明細もそろえます。
窓口で多かったのは、控除証明書を忘れる人と、還付が出るのに振込先の口座が分からない人でした。
- 申告書を作る会計ソフトか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使います。入力した数字は自動計算されるため、手計算の負担を減らせます。
- 提出するe-Tax(スマホ・パソコン)、郵送、税務署への持参のどれかです。紙と電子の違いは「紙とe-Taxどっちで申告?」で説明しています。給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税を自分で納めたい人は、「自分で納付」を選んだかを提出前に確かめ、実際の徴収方法を、対象年度の住民税を担当する市区町村にも確認してください。窓口で相談しながら書く場合の相談先は、「市役所と税務署どっち?」で説明しています。
控除証明書は、加入している保険の内容を確かめる材料にもなります。見直す手順は「保険料を見直す」で説明しています。
住民税で副業が会社にバレる仕組み
住民税は前年の所得をもとに計算され、6月から給与天引き(特別徴収)で会社が納めます。副業の所得に係る住民税も、徴収方法によっては給与から差し引く税額に含まれます。
会社には社員ごとの住民税額が通知されるため、その金額の変化などが副業に気づくきっかけになることがあります。知られる経路と条件は「普通徴収にしたのにバレる4パターン」にまとめています。
住民税を自分で納める方法を普通徴収といいます。給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税については、確定申告書の住民税欄で「自分で納付」を選択できます。ただし、所得や控除の状況によって普通徴収にする税額が生じない場合もあります。実際の徴収方法は、対象年度の住民税を担当する市区町村にも確認します。
副業が給与(ダブルワーク、アルバイトの掛け持ち)の場合、その給与にかかる住民税は、原則として本業分と合わせて特別徴収されます。窓口でも、給与の副業を普通徴収にできると思っている相談者が多くいました。
窓口では、住民税から副業を知られないかという相談をよく受けました。自治体によって、普通徴収に分けられたか確認できる時期は異なります。私のいた自治体では4月中旬ごろに確定したため、「その時期にもう一度お電話ください」とお伝えし、電話で本人確認をしたうえで結果を答えていました。
よくある質問
会社にバレたくない。どうすれば?
給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税は、確定申告で「自分で納付」を選択できます。ただし、これだけで会社に知られないとは言い切れません。副業が給与の場合、その分の住民税は本業の給与と合わせて特別徴収になるのが原則です。例外的な取扱いを設けている自治体もあります。詳しい条件は「普通徴収にしたのにバレる4パターン」で説明しています。
普通徴収に分けられたかは、いつ確認できますか?
普通徴収に分けられたか確認できる時期と方法は、自治体によって異なります。対象年度の住民税を担当する市区町村へ問い合わせてください。
提出した申告書で、経費の入れ忘れや過大計上に気づいたら?
申告期限内なら、原則として正しい申告書を作り直して期限内に再提出します。先に提出した還付申告がすでに処理されている場合などは、再提出では対応できないことがあるため、税務署に確認してください。
期限後に、経費の入れ忘れなどで納める税額を多く申告したり、還付額を少なく申告したりしていた場合は、更正の請求で訂正できることがあります。更正の請求は原則として、法律で定められた申告期限(法定申告期限)から5年以内です。還付申告の更正の請求は、原則として還付申告書を提出した日から5年以内です。税額や、他の所得から差し引いても残る赤字(純損失)の金額が変わらない場合は請求できません。
逆に、経費の過大計上などで納める税額を少なく申告したり、還付額を多く申告したりしていた場合は、修正申告で訂正します。
いくらから申告が必要?
ここでは、給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象となる会社員を想定します。年末調整が済んでおり、給与収入が2,000万円以下であることも条件です。
給与所得・退職所得以外の所得金額(各副業の売上から必要経費を引いた金額など)の合計額が20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。
住民税には20万円のルールがないため、所得税の申告が不要でも住民税は原則として申告します。確定申告をすると住民税の申告も済むため、別々に提出する必要はありません。
医療費控除などで確定申告をする年は、20万円以下でも副業分を記載します。
赤字でも申告したほうがいい?
申告による影響は、事業所得か雑所得かで異なります。損益通算は、ある所得の赤字を、制度の対象になるほかの所得の黒字から差し引くことです。副業が事業所得に該当する場合、その赤字は白色申告でも原則として給与所得などと損益通算できます。雑所得の赤字は、給与所得など他の所得とは損益通算できません。
青色申告では、損失が生じた年分の青色申告書を提出し、その後も連続して申告するなどの要件を満たすと、損益通算後に残った赤字(純損失)を原則として翌年以後3年間繰り越し、繰り越した年の所得から差し引けます。私が開業1年目の赤字23万円を申告しなかった実例は、「赤字23万円を捨てた話」で説明しています。
開業届は必要?
新たに事業を始めた人は、開業届を開業した年分の所得税の確定申告期限までに提出します。青色申告をする場合は、別に青色申告承認申請書を、原則3月15日まで(1月16日以後の開業は開業日から2か月以内)に提出します。
アルバイトを掛け持ちしています。確定申告は必要?
2か所以上から給与を受け、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職所得以外の所得金額との合計で申告要否を判定します。合計が20万円を超えると原則として確定申告が必要ですが、給与の合計額や所得控除などによる例外もあります。給与から源泉徴収された所得税等は、確定申告で年間税額と精算します。結果は、還付、追加納付、過不足なしのいずれにもなり得ます。詳しくは「ダブルワークはいくらから?」で説明しています。
申告の期限を過ぎてしまった。どうすれば?
期限後でも、所得税の申告書は所轄税務署へ提出できます。無申告加算税は、期限までに申告しなかったことに対してかかる税金です。税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告した場合、無申告加算税は原則として納める税金の5%です。
ただし、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、期限内申告の意思があったと認められる一定の要件をすべて満たす場合は、無申告加算税がかからないことがあります。事前通知後は税率が上がるため、期限を過ぎたことに気づいたら、できるだけ早く申告・納付します。延滞税がかかる場合もあります。
なお、申告義務がなく、まだ申告していない年の還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。入金までの目安は「確定申告の還付金はいつ?」で説明しています。
フリマアプリで売ったものも申告が要る?
家にある服や本、使わなくなった家電などの生活用品を売った利益は、非課税なので申告は要りません(1個または1組が30万円を超える貴金属・宝石・骨とうなどは除く)。
ただし、仕入れたものを繰り返し売っているなら副業の所得です。所得税の申告が必要かは、売上から必要経費を引いた所得と、給与などの条件で判断します。所得税の申告が不要でも、住民税は原則として申告が必要です。
按分の割合は何割にすればいい?
一律の割合はありません。費目ごとの実際の利用状況から、副業に必要な部分を明確に区分して計算します。基準の例と利用状況が変わった場合の見直しは、本文の家事按分の説明で確認できます。
まとめ
申告に入れる前に、副業の支払いに関する明細や書類を費目ごとに並べ、業務との関係と計上する金額を確認します。私用と兼ねる支出には按分の計算根拠を付け、パソコンは取得価額から処理方法を決め、その年の業務使用分を求めます。支払資料と計算メモを対応させて残すと、申告額がどのように計算されたか説明できます。
※私は税理士ではありません。この記事は一般的な内容と私自身の経験にもとづいています。制度や金額は執筆時点(2026年10月)の情報です。個別の判断は、税理士や所轄の税務署にご確認ください。住民税は対象年度の住民税を担当する市区町村に確認します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1900(給与所得者で確定申告が必要な人)
- 所得税基本通達 第35条《雑所得》関係
- No.2210 必要経費の知識
- No.2100 減価償却のあらまし
- No.2072 青色申告特別控除
- No.2024 確定申告を忘れたとき
- No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 所得税基本通達 第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》関係
- 国税庁「開業する場合」
- 国税庁「住民税、事業税に関する事項を記入する」
- 中野区「給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法」
- 所得税基本通達49-39
- No.2108 非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
- No.2250 損益通算
- No.2026 確定申告を間違えたとき
- 国税庁「電子取引データ保存について」
- 有田市「市民税・県民税の申告内容に関する調査」

