市役所が手伝えるのは、給与と白色の事業所得・雑所得、基本的な控除まで
青色申告や株の申告をする人は、原則として税務署へ案内していました。
私は確定申告の相談窓口を3年間担当していました。市役所の税務担当として受け付けた申告は、1,000件を超えました。自治体によって、確定申告まで受け付けるところと、税務署へ案内するだけのところがあります。私のいた市では、確定申告も受け付けていました。
この記事でわかること
- 対応範囲は自治体だけでなく、担当者の経験やその日の混み具合によって変わることもある。年齢や控除の内容で対象を絞る市もある
- 税務署へ案内されるのは、所得税の細かい判断が要るから。青色申告会や商工会議所が申告期に相談会を開くこともある
- 提出先は税金の種類によって違う。所得税は税務署、住民税は1月1日に住民登録がある市区町村。確定申告を出せば住民税の申告は要らない
- 必要書類がそろっていれば、1回の相談で申告書の作成まで進められる。持ち忘れやすいのは「還付先口座のメモ」や「控除証明書」など
- 混雑を避けるなら申告期の前半、平日の午前。e-Taxが使えれば窓口に行かずに済む
どちらへ行くか迷ったら、先に市役所へ電話をかけてください。聞く内容は、「1回の相談で済ませるために電話で確認すること」に挙げた5つです。
市役所と税務署、どっちに行けばいいか
市役所の税務担当が扱うのは住民税(市県民税)です。確定申告の対象になる所得税は国税で、管轄は税務署です。所得税の確定申告書の正式な提出先は税務署で、市役所が本来受け付ける書類ではありません。
それでも多くの自治体が2〜3月に「申告相談」の場を設けているのは、確定申告の内容がそのまま住民税の計算に使われるからです。ただしこの申告相談は、広報やサイトで案内される期間だけ開かれることが多く、年中いつでも市役所で確定申告を教えてもらえるわけではありません。
出したいものから決める
市区町村で完結
自治体が対象にしていれば市役所
税務署
市役所の申告相談は、申告期に限って開かれることが多いです。作成済みの申告書は税務署に持参・郵送するか、e-Taxで提出します(預かって回送する自治体もあります)。
| 市役所 (税務担当) | 税務署 | |
|---|---|---|
| 扱う税金 | 住民税 (市県民税) | 所得税などの国税 |
| 住民税だけの申告 | ここで完結 | 扱わない |
| 確定申告の相談 | 申告期だけのことが多い | 通年 (事前予約制) |
| 複雑な申告 (青色・株・不動産) | 原則対象外 | 対応する |
| 確定申告書の提出先 | 預かって回送する (自治体による) | 正式な提出先 |
住民税の申告だけでいい人(前年に収入がなかった人など)は、市役所への申告だけで手続きが終わります。この申告が必要な人については、「住民税の申告だけ必要な人は?」にまとめました。所得税の確定申告が必要でも、内容によっては市役所で相談できますが、申告書は最終的に税務署へ提出します。
なお、住民税の申告だけでは確定申告をしたことになりません。
確定申告と住民税の申告は、別の申告です
市役所と税務署で窓口が分かれているのは、所得税と住民税の申告が別だからです。所得税の確定申告は税務署へ、住民税の申告は1月1日に住民登録がある市区町村へ出します。
確定申告をすれば、住民税の申告は要りません。宝塚市は「確定申告書が提出されると市・県民税申告書が提出されたものとみなされます」と案内しています。
| 項目 | 確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 対象の税金 | 所得税(国) | 住民税(市区町村・都道府県) |
| 提出先 | 管轄の税務署 | 1月1日に住民登録がある市区町村 |
| 確定申告を出したとき | ― | 出したものとみなされ、別に出さなくてよい |
確定申告のデータは、税務署から市区町村へ送られます。富里市は、申告書の「1月1日の住所」に市内の住所を書いた場合に、データが送られてくると説明しています。引っ越した年に住所を誤って書くと、データが正しい送付先の市区町村に届かないことがあります。
確定申告のデータが市区町村へ届くまでには時間がかかります。松戸市は、確定申告の内容が市民税・県民税の税額に反映されるまで、2か月ほどかかるとしています。
市役所が確定申告そのものを受け付けるかは、自治体によって違います。国分寺市は「所得税は国税ですので、市役所で申告することはできません」と案内しています。一方、2月16日から3月15日の間だけは、作成済みの確定申告書を預かって税務署へ提出しています。私のいた市では、確定申告書も受け付けていました。
「回送」といっても、紙の申告書をまとめて郵送するとは限りません。私のいた市役所では、受け付けた内容をその場で入力し、毎日電子データで税務署へ送っていました。紙を運ぶわけではないので、その日のうちに税務署へ届いていました。申告内容を税務署へ送る方法や頻度は、自治体によって違います。還付金が振り込まれるまでの流れは、「確定申告の還付金はいつ振り込まれる?」で説明しています。
市役所の窓口でしてもらえること・してもらえないこと
私のいた窓口では、次の基準で対応を分けていました。
- 申告書の作成を手伝い、完成後に受け取る
給与所得があり、医療費控除・生命保険料控除を受ける人や、扶養親族を追加する人の申告です。白色申告の事業所得や副業の雑所得についても、作成を手伝っていました。書類がそろっていれば、その場で相談者と一緒に申告書を作り、完成後に受け取っていました。 - 税務署へ案内する
青色申告、株やFXの損益、不動産の家賃収入、土地や建物の売却、消費税などが該当します。所得税の細かい判断が必要な申告は、市役所では責任を持って対応できないため、相談者を税務署へ案内するのが原則でした。税務署のほかに、青色申告会や商工会議所が申告期に相談会を開いていることもあります。
ただ、実際の対応範囲には多少の幅がありました。青色申告でも、書類の作成を最後まで手伝うことがありました。担当者の経験やその日の混み具合で、扱える範囲は変わっていました。
市役所で「うちでは扱えません」と言われることもあります。少なくとも私のいた窓口では、不確かな回答を避け、税務署へ相談してもらう方針でした。対応範囲は自治体ごとに違うので、隣の市では受け付けてもらえることもあります。
自治体によっては、所得の種類だけでなく年齢や控除の内容によっても、申告相談の対象者を絞っています。
千葉市は2026年の申告書の作成相談を、事前予約制で2月16日から20日までの5日間だけ開いています。65歳以上の人と障害のある人で、いずれも年金・給与以外の収入がない市内在住者に限られます。ふるさと納税を含む寄附金控除や住宅ローン控除がある人は対象外です。完成した申告書の預かりは3月16日まで受け付けています。横浜市港北区は、給与収入だけの人が医療費控除を受けるための還付申告に限って受け付け、寄附金控除がある申告は扱いません。
所得の種類だけで判断せず、自分が申告相談の対象になるかを最新の案内で確かめてください。
1回の相談で済ませるために電話で確認すること
行く前に電話をかけると、受付対象や必要な持ち物を確認できます。聞くのは次の5つです。
- 期間と方式
今年の申告相談はいつからいつまでか。予約制か整理券制か - 自分が対象か
給与・年金だけか、医療費控除や寄附金控除があっても受け付けてもらえるか - どちらの申告か
住民税の申告だけで済むのか、確定申告が必要なのか - 預かってもらえるか
作成済みの申告書を持ち込んだ場合の扱い - 持ち物
本人確認書類・マイナンバー・控除証明書・還付先口座のほかに要るものはないか
確定申告の相談で申告書作成まで進める持ち物
必要書類がそろっていれば、その日の相談で申告書の作成まで進められます。基本の持ち物は次のとおりです。
- 源泉徴収票(勤め先すべての分)
年の途中で辞めた会社の分も必要です。手元になければ、その会社に再発行を頼んでおきます。もらえない場合の対処は、「源泉徴収票がないときの確定申告」にまとめています。 - マイナンバーカード
手元にない場合は、マイナンバーが分かるものと、運転免許証などの本人確認書類の組み合わせで代用します。通知カードを使えるのは、記載された氏名・住所が住民票の内容と同じ場合だけです。引っ越しや改姓をしていれば、マイナンバー入りの住民票の写しを取っておきます。 - 還付先の口座が分かるもの
本人名義の口座に限ります。通帳でもアプリの画面でも、支店名と口座番号が読み取れるものを用意します。 - 控除証明書
生命保険料・地震保険料・iDeCo(小規模企業共済等掛金)などが対象です。秋ごろに届くハガキか電子データです。 - 医療費の集計メモ
領収書は提出せず、支払った金額を「医療費控除の明細書」にまとめて書きます(領収書は自宅で5年保存)。健康保険から届く「医療費のお知らせ」があれば、明細書への記入を省ける項目もあります(通知に載らない支払い分は自分で合計します)。窓口で領収書を一から集計すると、それだけで時間がかかります。 - 副業・事業の収支メモや帳簿
収入と経費が月ごとにまとまっていれば、窓口で申告書を早く作成できます。
税務署の確定申告会場で申告書をスマホやパソコンから送信するときは、マイナンバーカードの暗証番号も要ります。ログイン用の数字4桁(利用者証明用)と、送信用の英数字6〜16文字(署名用)の2種類です。暗証番号を忘れると、会場では手続きできません。スマートフォンがあれば、コンビニのキオスク端末で再設定できます。署名用と利用者証明用の両方が分からないときは、住んでいる市区町村の窓口で手続きします。
予約制の会場には受付画面を表示できるスマホを、整理券制の会場には整理券を持って行きます。前にe-Taxを使ったことがあれば、控えておいた利用者識別番号をすぐ入力できます。
印鑑は原則いりません。申告書への押印は2021年4月に廃止されています。
とくに忘れやすいのは、生命保険料などの控除証明書と、還付先口座のメモです。この2つは、家を出る前にもう一度確認してください。
いつ行くと空いているか
申告期(例年2月16日から3月15日ごろで、期限が土日にあたる年は翌平日まで)は、どの会場も混みます。来場者は期限前の1週間に集中するため、申告期間の前半にあたる平日の午前は比較的落ち着いています。混み具合は会場や年によって違いますが、都合がつくなら、比較的空いている2月に行くのがおすすめです。
以前は、指定された時間枠の入場整理券を使って確定申告会場に入る方式でした。税務署では、令和5年3月からこの入場方式を順次廃止しました。いまは電話で相談日時を予約します。一部の税務署では、LINEでも予約できます。予約方法は年によって変わるため、出かける前に国税庁の特集ページで確認してください。自治体の申告相談でも、予約制や整理券制にする会場が増えています。
- 税務署は通年で相談を受け付けている
面接相談は電話などによる事前予約制です。電話相談センターを利用できるほか、国税庁のチャットボット(ふたば)は土日や夜間でも使えます。 - 還付申告は翌年1月1日から5年間いつでも出せる
還付金が振り込まれる時期の目安は「確定申告の還付金はいつ振り込まれる?」にまとめています。
窓口に行かずに済ませる選択肢
マイナンバーカードとスマホがあれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作り、e-Taxで送信できます。マイナポータル連携を設定すると、給与の源泉徴収票の情報や、医療費・ふるさと納税などのデータが申告書へ自動で入力されます。取り込めるかは、勤め先や保険会社によります。給与所得と基本的な控除だけの申告なら、申告書の作成から送信まで自宅でできます。紙で出す場合との違いは、「確定申告は紙とe-Taxどっち」に書いています。
事業の申告や青色申告では、日々の取引を帳簿につけます。手書きでもできますが、会計ソフトなら、つけた帳簿からそのまま申告書を作れます。私自身、副業でネットショップをしていた時期は、freee会計で帳簿をつけ、自宅からe-Taxで青色申告書を送信していました。窓口の混雑を避けるなら、まずe-Taxで済ませられないか確認するとよいです。
帳簿をつけるなら、副業のお金を家計と分けておけば、集計を早く終えられます。やり方は「副業の口座を家計と分ける」に書いています。
freee会計を無料で試してみるよくある質問
市役所で確定申告を教えてもらうのは無料ですか?
無料です。税務署の相談も、申告期に自治体や税理士会が開く相談会も、基本的に費用はかかりません。ただし税理士会や青色申告会の相談会は、受け付ける内容や対象、予約の要否が主催する団体ごとに違うので、行く前に確認してください。無料の窓口で受けられるのは、申告書を書く手伝いや一般的な質問への回答までです。
相談に予約は必要ですか?
自治体によります。以前は先着順が中心でしたが、予約制や整理券制が増えました。税務署での面接相談は電話などによる事前予約制です。作成済みの申告書を出すだけなら、整理券も予約も要りません。税務署の窓口へ持参するほか、郵送したり、閉庁日でも使える時間外収受箱へ入れたりできます。出かける前に、自治体の広報かサイトで確認してください。
税理士への相談とどう違いますか?
窓口で受けられるのは書き方の補助までです。何をどう申告すれば税負担が軽くなるかという個別の判断や、申告書の代理作成は税理士の業務です(依頼すれば有償)。複雑な申告が続く場合は税理士への依頼も選択肢になります。一般的な確認であれば、窓口で相談できます。
どんな申告だと市役所では対応できませんか?
私のいた市役所の窓口では、次の申告は原則として税務署で相談するよう案内していました。青色申告、株やFXの損益、不動産の家賃収入、土地や建物の売却、消費税などです。所得税について細かな判断が必要な質問には、市役所の窓口で責任を持って回答できないためです。対応範囲は自治体ごとに違います。
自分の市で受け付けてもらえるか、行く前に知る方法はありますか?
電話なら、その市の受付対象を確認できます。そのときは「給与と医療費控除の申告ですが、そちらで受け付けてもらえますか」のように伝えます。所得と控除の内容まで伝えると、その電話で受付対象かどうかを確認できます。市役所で扱えるかは主に所得の種類で決まりますが、年齢を条件にする自治体もあるので、自分の年齢も伝えると受付の対象かどうかを確認できます。会場と期間、予約の有無も同時に聞いておきます。
確定申告書は、どの税務署に出してもいいですか?
いいえ。提出先は、原則として住所地(納税地)を管轄する税務署です。国内に住所がなく居所がある人はその居所地を、住所や居所のほかに事業所がある人は事業所の所在地を、納税地にすることもできます。管轄の税務署がどこかは、国税庁のサイトで住所や郵便番号から調べられます。市役所の申告相談で預かってもらった申告書は、管轄の税務署へ回送されます。e-Taxでは、住所を入力すると管轄の税務署が自動で設定されます。
まとめ
市役所の窓口では、対応できる申告は作成まで手伝い、専門的な判断が必要な申告は税務署で相談するよう案内します。ただし対応範囲は自治体ごとに違います。
必要な持ち物がそろっていれば、窓口で申告書の作成まで進められます。忘れやすいのは控除証明書と、還付先口座のメモです。時期を選べるなら、2月の平日の午前が比較的すいています。
還付申告は3月15日の期限に縛られず、翌年1月1日から5年間提出できます。ただし市役所の申告相談は申告期に限られることが多いため、期間終了後は税務署へ申告書を提出します。
e-Taxで申告できる人は、窓口へ行かずに手続きを終えられます。窓口へ行くなら、まず住んでいる市へ電話し、今年の申告相談の期間と、自分が対象かどうかを確かめてください。
※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年9月)の情報です。相談窓口の体制や受付範囲は自治体・税務署によって異なります。お出かけ前に公式サイトや電話でご確認ください。
参考:国税庁 所得税の確定申告/タックスアンサー No.2030 還付申告/No.1119 医療費控除に関する手続について/税についての相談窓口/No.2029 確定申告書の提出先/電話等の事前予約による申告相談体制への移行のお知らせ/宝塚市「確定申告と市・県民税申告の違いを教えてください」/富里市「確定申告と住民税(市民税・県民税)申告は何が違うのですか?」/松戸市「確定申告をしましたが、市役所にも申告が必要ですか?」/国分寺市「所得税の確定申告をしたいのですが、市役所でできますか。」/調布市「マイナンバーカードの電子証明書の再設定・ロック解除がコンビニ等で可能」

