申告するなら、e-Taxを使う。違うのは税額ではなく、出したあとのリスク
ただし青色申告だけは、出し方で控除額そのものが変わる。
私は市役所の税務担当として、税務署から送られてくる確定申告のデータを住民税に反映させる仕事をしていました。紙で提出された申告書を処理した経験から、提出後に何が起きるのかを解説します。
この記事でわかること
- 紙だから審査が厳しくなることはない。違うのは、紙は一度画像化してから、市区町村が読み取る工程が入ること
- 青色申告だけは別。令和8年分までは紙55万円・e-Tax65万円(紙でも優良な電子帳簿と届出書があれば65万円)
- 令和9年分からは書面が10万円。65万円はe-Taxでの送信だけ、優良な電子帳簿の保存などが75万円の上乗せに必要になる
- 間違いは4種類(桁・記入欄のずれ・チェック欄の読み漏れ・読めない文字)。手書きでなく印刷した申告書でも起きる
- e-Taxで出す方法は2つ。マイナンバーカードの電子証明書が切れていると使えないが、市区町村の窓口で更新できる
紙とe-Taxで、税額の計算は変わらない
紙で出しても、e-Taxで出しても、受けられる控除も税率も同じです。紙だから審査が厳しくなることもありません。ただし青色申告をしている人だけは別で、控除額に差が出ます。
申告書がデータになるまでの工程は、紙とe-Taxで違います。e-Taxで出した申告は、最初から数字のデータとして届きます。紙で出した申告書は、いったん画像にされ、それを受け取った市区町村が読み取ってデータにします。還付までの日数は、税務署での処理で差が出ます。国税庁は記載内容や添付書類の審査に日数がかかることと、2月・3月に申告書が集中することを理由に挙げています。市区町村は申告内容を住民税に反映するために読み取り、この工程で数字の間違いが起きます。
| 紙 | e-Tax | |
|---|---|---|
| 税率と主な控除 | 同じ | 同じ |
| 青色申告特別控除令和8年分まで | 55万円優良な電子帳簿と届出書があれば65万円 | 65万円 |
| 青色申告特別控除令和9年分から | 10万円電子帳簿保存をしていても65万円になりません | 65万円要件を満たせば75万円 |
| 還付の目安 | 1か月〜1か月半(2月・3月の申告期間) | 約3週間自宅や税理士事務所から送った場合の日数。 不備や別送書類があるときは対象外。 (国税庁の案内) |
| 添付書類 | 申告の内容によって提出か提示が必要源泉徴収票など不要なものもあります | 一部を省略できる(5年間の保存は必要) |
| 提出の記録 | 控えへの収受日付印は令和7年1月に廃止 | 送信のあとに受信通知が残る |
| 反映されるまで | 画像にして読み取る | 数字データのまま |
紙の申告書は、出したあとどう処理されるのか
確定申告書は税務署に出しますが、申告内容は所得税以外の計算にも使われます。データは市区町村にも回ってきて、6月からの住民税のもとになります。私はこのデータを課税システムに取り込み、住民税額を計算していました。
- e-Taxで出した申告
数字データで届くので、システムにそのまま取り込めます。 - 紙で出した申告
画像データになって届きます。数字データとして使うには、読み取りの工程が必要です。
紙の書類は、確定申告書にかぎらず、人が入力するか機械で読み取る工程を経てデータになります。私のいた市役所でも、会社が紙で提出する給与支払報告書のデータ入力は業者に委託していました。会社から源泉徴収票をもらえないときに給与支払報告書がどう役立つかは、「源泉徴収票がないときの申告の進め方」に書きました。
読み取りで、数字を誤って取り込むことがある
読み取りの工程では、次の4つの間違いが多く起きていました。
- 金額の桁
桁を誤って取り込まれることがあります。 - 記入欄のずれ
書いた数字が、別の欄の数字として取り込まれることがあります。 - チェック欄の読み漏れ
住民税を「自分で納付」にするチェックが反映されないことなどです。 - 手書きの文字
判読しにくい文字は、読み取れないことがあります。
手書きだけで起きることではありません。パソコンで入力して印刷した申告書でも、スキャンの画質が粗くて数字が確かめにくいことがありました。読み取れない数字や、ほかの資料と一致しない金額が見つかると、税務署に電話して正しい額を確認していました。原本を見るため、税務署まで行ったこともあります。ここまでの例は私のいた市役所で見た範囲に限られ、全国でどれくらい起きているかを示すものではありません。紙で出した申告も、ふつうはそのまま正しく処理されます。
間違いを直す仕組みはあるが、確実ではない
取り込んだデータを、そのまま住民税の計算に使うわけではありません。税額を計算する段階で、給与支払報告書などと数字が合わない申告は、数万件規模でエラーとして抽出されます。
3月から5月にかけて、これを一件ずつ確認していました。システムで検出されない間違いもあるため、エラーになった申告だけでなく、すべての申告に目を通していました。
間違いが見つかったら、正しい数字をシステムに上書きしていました。修正後は、市区町村が計算に使う数字と、税務署が把握している元の数字との差が生じます。申告の時期が落ち着いた夏ごろに、その差が一定額以上ある申告を「連絡せん」という書類で税務署に報告する決まりになっていました。
確認の体制は自治体によって違います。私のいた市役所では全件を見ていましたが、読み取りの間違いが必ず見つかるとは限りません。
ただし、申告書の確認と修正は提出後の作業です。申告時に、読み取りの間違いが起きにくい方法を選ぶこともできます。
紙で出した人に起きること3つ
- 還付が遅い
自宅などからe-Taxで送った場合、還付までは約3週間が目安です。紙で出した場合、2月・3月の申告期間は還付まで1か月〜1か月半が目安だと国税庁が案内しています。日数の内訳は「確定申告の還付金はいつ振り込まれる?」で説明しています。 - 住民税に申告と異なる数字が反映されることがある
6月に届く住民税の通知書の金額が申告の控えと合わないときは、市区町村の住民税担当課で確認できます。通知書の見比べ方は「住民税が去年より高いときの原因の見つけ方」に書きました。 - 副業(事業所得・雑所得)分の「自分で納付」が反映されないことがある
チェック欄の読み漏れで、副業分の住民税が会社の給与から天引きされることがあります。副業の収入が給与(アルバイトの掛け持ち)の場合は、この欄を選んでも住民税を分けられません。会社へ伝わる流れは「副業の住民税で会社にバレる仕組み」で説明しています。
それでも紙で出すときに気をつけること
窓口では、自分でe-Taxを使える人にはいつも勧めていました。税務署でもe-Taxの利用を案内していました。
それでも紙で出すなら、次の5つを確かめてください。
- 数字は枠の中にはっきり書く
枠からはみ出した数字は、隣の欄の数字として読み取られることがあります。 - チェック欄は濃く塗る
薄いチェックは、機械に読み取られないことがあります。 - 訂正が多くなったら書き直す
訂正の多い申告書は、機械で読み取るときも人が確認するときも間違いが起きやすくなります。 - 控えを手元に残す
あとで住民税の通知書と見比べるときに使います。収受日付印は令和7年1月に廃止され、申告書の控えには押してもらえなくなりました。 - 源泉徴収票は添付しなくてよい
申告書に一緒に出す必要はありません。ただし税務署や市役所の会場で申告書を作ってもらうときは、持って行かないと作成できません。
提出した記録は、国税庁が案内している方法でも残せます。窓口で希望すれば、収受した日付と税務署の名称を書いたリーフレットをもらえます。
郵送で出すときは、切手を貼った返信用封筒を同封すると、同じリーフレットが返送されます。あとから確認したいときは、申告書等情報取得サービスで確定申告書や青色申告決算書のPDFを無料で受け取れます。マイナンバーカードが必要で、直近の年分は翌年5月1日から取得できます。
手書きより、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作って印刷するほうが、読み取りの間違いは減ります。紙で提出する場合は、申告書をスキャンする工程があります。
青色申告は、紙だと令和9年分から控除が10万円になる
令和8年分までは、複式簿記で記帳し、確定申告書と青色申告決算書を期限内に申告するのが前提です。そのうえでe-Taxでデータを送るか、優良な電子帳簿を保存して届出書を出せば、65万円の控除を受けられます。どちらもしていなければ、控除は55万円です。
紙で出しても、この2つがそろっていれば65万円です。優良な電子帳簿とは、訂正や削除の履歴が残るなど3つの要件を満たした帳簿です。ふつうに電子データで保存しているだけでは足りません。
令和9年分からは、電子帳簿保存をしていても書面は10万円です
紙とe-Taxの差は、令和9年分の確定申告から大きくなります。国税庁は「令和8年分の確定申告までは、書面申告でも55万円の青色申告特別控除が適用可能でしたが、令和9年分以降は、書面申告の場合の控除上限額は10万円となります」と案内しています。
令和9年分からは、65万円の控除を受けるにはe-Taxでの送信が要ります。優良な電子帳簿の保存などは、65万円の控除には不要になり、75万円の控除を受ける場合に必要になります。書面で出した場合は、電子帳簿保存をしていても控除額は10万円です。
届出書を出せば75万円まで受けられます
一方で、控除が75万円になることもあります。65万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存かデジタルシームレス保存をして、期限までに届出書を出した場合です。すでに優良な電子帳簿の保存で65万円の控除を受けている人は、この届出書を出し直す必要はありません。
決算書のデータは税務署からは送れません
税務署のパソコンでは、青色申告決算書のデータをe-Taxで送信できません。これらの控除を受けるなら、自宅などから送ることになります。65万円の控除を適用した年の決算書は、「副業で年814万円売った確定申告」に載せています。
e-Tax(電子申告)で出す方法
方法は2つあります。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナー
マイナンバーカードとスマホがあれば、画面に沿って入力してそのまま送信できます。給与と基本的な控除だけの申告なら、これで進められます。ID・パスワード方式は令和7年10月に新規発行が止まったので、これから利用を始める場合は、マイナンバーカードが必要です。 - 会計ソフトから送信する
副業や事業で帳簿をつけている場合は、会計ソフトから送信できます。
e-Taxにも気をつける点はあります。送信は申告書を出す手続きで、税金の納付は含まれません。納める税金がある場合は、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付、窓口納付から選びます。振替納税では、最初に依頼書を出しておくと、以後は指定日に口座から自動で引き落とされます。
還付まで約3週間という目安は、自宅や税理士事務所などから申告し、不備や別送書類がない場合の日数です。会場のパソコンから送った場合は、対象外です。すでにID・パスワード方式を使っている人は令和8年分まで使えますが、令和9年分の確定申告からは利用できなくなる予定です。e-Taxでは読み取りの間違いはありませんが、自分で数字を入力するときに間違えることはあります。
電子証明書が切れると、e-Taxでは送れなくなります
マイナンバーカードの電子証明書は、発行から5回目の誕生日で切れます。カード自体の有効期限は18歳以上なら10回目の誕生日までなので、カードが使えても電子証明書だけが切れていることがあります。更新は期限の3か月前から市区町村の窓口でできます。
利用者証明用の暗証番号(4桁)は3回、署名用の暗証番号(6〜16桁)は5回続けて間違えると、それぞれロックされます。解除と再設定は市区町村の窓口でできます。スマートフォンを持っていれば、コンビニのキオスク端末でも手続きできます。ただし署名用と利用者証明用のどちらも分からないときは、窓口へ行くことになります。
電子証明書が切れたり暗証番号がロックされたりして、申告期限が近いときは、紙で出すほうが早いこともあります。
マイナポータル連携で入力が減ります
マイナポータル連携を設定しておくと、データを取り込んで自動で入力できます。対象は給与の源泉徴収票、生命保険料や地震保険料の控除証明書、医療費、ふるさと納税、住宅ローン控除などです。取り込めるかどうかは、勤め先や保険会社が連携用のデータを提供しているかによります。入力する項目そのものが減るので、間違いも減ります。私も設定して使っています。
私はfreeeで帳簿から申告まで済ませていました
私は、副業ではfreeeで帳簿をつけ、申告書を作り、そのままe-Taxで送っていました。令和9年分から、青色申告特別控除は書面なら10万円、e-Taxなら65万円で、55万円の差が出ます。同じソフトで帳簿をつけて申告書を作れば、65万円の控除に必要なe-Taxでの送信もできます。
freee会計を無料で試してみるよくある質問
紙で出すと、審査や控除で不利になりますか?
審査で不利になることはありません。控除や税額の計算も、青色申告を除けばどちらでも同じです。青色申告特別控除だけは違います。令和8年分までは、紙だと55万円(優良な電子帳簿と届出書があれば65万円)、e-Taxなら65万円です。令和9年分からは、電子帳簿保存をしていても書面の上限は10万円になります。
パソコンで作って印刷すれば、手書きより安全ですか?
読み取りの間違いは手書きより減ります。ただ、スキャンを挟む点は同じです。私は印刷された申告書でも、数字がはっきりせず税務署に確認したことがあります。
市役所の窓口で申告した場合は、紙扱いになりますか?
私のいた市役所では、受け付けた内容をその場で入力し、毎日、電子データで税務署へ送っていました。回送の方法は自治体で違います。これは市区町村から税務署へ回す手順で、本人がe-Taxで送信したことにはなりません。申告のどこまで手伝ってもらえるかは「市役所の窓口で相談できる範囲」に書きました。
税務署の会場のパソコンで送れば、e-Taxで出したことになりますか?
会場から送っても、e-Taxでの送信になります。ただし国税庁が案内している還付まで約3週間の目安は、自宅や税理士事務所などから送った場合の日数で、会場のパソコンから送ったときは対象外です。青色申告決算書のデータも、税務署のパソコンからは送信できません。65万円や75万円の控除を受けるなら、自宅などから送ることになります。
マイナンバーカードがなくても、e-Taxで出せますか?
これから利用を始める場合は、マイナンバーカードが必要です。ID・パスワード方式は令和7年10月に新規発行が止まりました。すでにID・パスワード方式を使っている人は令和8年分まで使えますが、令和9年分の確定申告からは利用できなくなる予定です。カードが手元にないうちは、紙で出すことになります。
住民税の通知書が、申告した内容と合っていません。どうすればいいですか?
申告の控えと通知書を手元に置いて、市区町村の住民税担当課に電話してください。担当課が通知書を申告のデータと照合し、読み取りの間違いなら税額を直します。修正されると、あとから変更後の通知が届きます。申告の内容そのものが違っていた場合は、税務署へ修正申告か更正の請求をすることになります。
まとめ
紙の申告では画像化と読み取りを挟むため、還付が遅れたり、数字が誤って取り込まれたりすることがあります。
青色申告をしている人は控除額も変わり、令和9年分からは電子帳簿保存をしていても書面の上限は10万円になります。市役所で申告データを処理してきた経験から、利用できる人にはe-Tax(電子申告)を勧めます。
給与と基本的な控除だけの申告なら、マイナンバーカードとスマホで、国税庁の確定申告書等作成コーナーから送れます。帳簿をつけている人は、会計ソフトから直接送信できます。
※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年9月)の情報です。手続きや処理の流れは変わることがあります。個別の状況は、管轄の税務署や市区町村にご確認ください。
参考:国税庁 e-Tax(国税電子申告・納税システム)/国税庁 確定申告書等作成コーナー/国税庁「青色申告特別控除」/国税庁「75万円の青色申告特別控除を適用しましょう(令和9年分から適用)」/国税庁「収受日付印の押なつの見直し」/e-Tax「添付書類の保存」/国税庁「申告書に添付・提示する書類」/国税庁「税金の納付」/国税庁「マイナポータル連携特設ページ」/e-Tax「ID・パスワード方式とは何かを知りたい」/デジタル庁「マイナンバーカードおよび電子証明書の有効期限・更新」/調布市「マイナンバーカードの電子証明書の再設定・ロック解除がコンビニ等で可能」/さいたま市「【マイナンバーカード】暗証番号がロックされた場合・暗証番号を忘れた場合」

