確定申告から振り込みまで、早くて2か月ほどかかる
時間がかかるのは、還付までに受付・課税・支払いの工程があるから。
私は市役所の税務担当として、住民税の還付処理をしていました。月に一度、還付になる人の一覧を作り、還付請求書を郵送し、返ってきた書類をもとに支払いの手続きをしていました。還付までの日数の目安と、遅れているときの連絡先を解説します。
この記事でわかること
- 住民税の還付は、納めたあとに確定申告で税額が下がったときと、納めすぎたときに起きる
- 市役所の月締めに間に合うかどうかで待ち時間が1か月ずれる
- 還付を口実にATMを操作させる電話は詐欺。正規の還付手続きでATMを操作することはない
- 給与から天引きされている人は、天引き額の調整で済むことが多い。還付になるときの戻り方も違う
振り込みまでの期間は、どこから数えるかで変わります。
| どんなとき | どうなるか |
|---|---|
| 確定申告をした日から数えるとき | 早くても2か月かかります。宝塚市は修正申告の場合でおおむね2か月から3か月と案内しています |
| 還付請求書を返送してから数えるとき | 10日ほどかかります。1か月程度としている市区町村もあります |
| 口座が登録されている場合 | 還付請求書の返送がいらないこともあります |
| 案内された期間を過ぎても動かないとき | 市区町村の税の担当課へ問い合わせます |
なぜ住民税に還付が起きるのか
住民税は、前の年の所得をもとに税額が決まります。納め方は、納税通知書を受け取って自分で納める方法と、給与から毎月天引きされる方法です。年金からの天引きもあります。税額が決まり、通知どおりに納める通常の流れでは、還付される金額はありません。
還付になるのは、納めたあとに税額が下がったときです。いちばん多いのは、確定申告をした場合です。申告によって所得や控除の内容が変わると住民税の額も計算し直され、すでに納めた分が新しい税額を上回ります。その差額が戻ります。納付書には1期から4期の用紙と全期分の用紙が入っています。両方を納めてしまったときも、納めすぎた分(過誤納)が戻ります。
私が窓口で見た範囲では、還付の多くは医療費控除によるものでした。扶養控除の入れ忘れがその次でした。ほかに、更正の請求で税額が下がって還付になることもありました。還付を受けた人は、いずれも控除の漏れなどにあとから気づいて申告していました。
医療費控除の計算では、自己負担額から高額療養費として戻った分を差し引きます。高額療養費の上限は2026年8月に上がりました。区分ごとの新しい金額を、「医療保険の見直しと高額療養費」にまとめました。
納期限を過ぎた住民税などの市税が残っている場合は、還付額が先にその未納分へ充てられます。還付額の全額が充てられれば振り込みはなく、一部が残ればその分だけ振り込まれます。充当したときは市区町村から通知が届くので、本人へ知らせずに還付額を未納分へ充てることはありません。
注意
確定申告が市区町村の当初の課税計算に間に合った場合は、その内容を反映したうえで税額が決まります。この場合は納めすぎが起きないので、還付にもなりません。間に合わなかったときは、まだ納めていない期の税額が変わり、すでに納めた額が新しい年税額を上回った分だけ現金で戻ります。
確定申告から振り込みまで、市役所で何が起きているか
確定申告書を出す先は税務署です。ところが住民税を計算して還付するのは市区町村で、申告書がそのまま届くわけではありません。申告データが税務署から市区町村へ送られるまでに時間がかかります。
私のいた市役所では、次の順番で還付処理を進めていました。
還付までの流れ(申告先と支払い先が違うので、受け渡しに時間がかかります)
申告のデータを受け取り、システムに反映して課税の内容を確認
月に1回の締めで還付になる人の一覧を出し、事務処理をして住民税還付請求書を郵送
月1回の締め+10日ほど
受け取り、記入して返送
支払いの処理をして振り込む
10日ほど
税務署での受け付け・処理と、市区町村への回送にも時間がかかります(申告の時期は特に。紙の申告だと遅くなることがあります)。
この一連の手続きに、早くても2か月ほどかかります。
ほかの市区町村も、同じくらいの期間を案内しています。宝塚市も、修正申告による還付は提出日から数えておおむね2か月から3か月後になると案内しています。中野区は、申告による減額の処理が終わるまで通常3か月から4か月かかり、還付請求書を返送してから振り込みまでさらに3週間から4週間としています。自分の市区町村が案内している期間を先に確認すると、振り込み時期の目安が分かります。
還付になる人の一覧は月1回、月の初めに確定していました。締めの回数や時期は自治体によって違います。
同じ時期に申告しても、人によって1か月ずれる
待ち時間にいちばん差がつくのは、月締めに間に合ったかどうかです。
市役所での処理が締めの直前に終わった人は、その回の一覧に載ります。処理が数日遅れて締めに間に合わなかった人は、次の締めまで待つことになります。同じ週に申告していても、ここで1か月近く差がつきます。
「知り合いはもう振り込まれたのに、自分にはまだ何も来ない」という相談を受けたことがあります。申告内容に問題があるのではなく、市役所での処理が次の月締めに回っただけです。
確定申告の時期は税務署の処理件数が増え、市役所でも課税内容の確認が追いつかないので、振り込みも遅くなります。
還付請求書が届いたら何をするか
多くの場合、市区町村から住民税還付請求書という書類が郵送されます。これに記入して返送するまで、還付の手続きは進みません。書類の名前や手続きの方法は市区町村ごとに違います。届く書類には「市民税・県民税」と書かれていることが多く、これは住民税を指します。郵送で返すところもあれば、インターネットで申請できるところもあります。
還付通知書は、還付になることを知らせるだけの書類で、振込先の口座情報を書いて返す還付請求書とは別です。名古屋市では、この2つが1枚の用紙になっていて、きりとり線に沿って還付請求書を切り離して返送します。横浜市は、還付請求書が同封されているときだけ返送が必要です。
還付請求書が届かないこともあります。口座振替で納めている場合は、返送なしでその登録口座へ振り込む市区町村があります。マイナポータルで公金受取口座を登録している場合も、その口座へ振り込む市区町村があります。請求書は届き、その口座を使うかを選ぶところもあります。給与から天引きされている場合は、還付請求書が届かないことがあります。
主に次の2つを記入します。
- 振込先の口座
本人名義の口座を書きます。家族など本人以外の名義にしたいときは、委任状を求められます - 連絡先の電話番号
口座に振り込めなかったときに、市役所から電話をかけます
口座へ振り込めず、本人とも連絡が取れない場合は、手続きを先へ進められません。日中につながる番号を書いておいてください。
ヒント
返送後も支払いの処理があるため、振り込みまで10日ほどかかります。返送後の処理期間は市区町村によって違い、振り込みまで1か月程度としているところもあります。届いた書類をその日のうちに返すと、そのぶん振り込みも早くなります。
地方税法第17条の4では、通知日から30日を過ぎて請求した場合、その後の日数は還付加算金の計算に含めないと定めています。
給与から天引きされている人はどうなるか
会社の給与から住民税が天引きされている人(特別徴収)には、還付請求書が届かないことがあります。そもそも還付が発生しない場合と、還付額が勤務先を通して戻る場合があるからです。
確定申告の内容は、翌年度の住民税を計算するときに反映されます。最初から低い税額で決まるので、納めすぎが起きず、還付にもなりません。6月からの天引き額が、そのぶん低くなります。
税額が決まったあとに申告した場合は、特別徴収税額の変更通知書が勤務先へ送られ、残りの月の天引き額が調整されます。すでに納めた分が新しい税額を上回ったときだけ、還付になります。転職して天引きの切り替え時期がずれたときも、天引き額の調整か還付になります。詳しくは、「転職で天引き額が変わるときの調整」に書きました。
還付の受け取り方も市区町村によって違います。大阪市は当年度分について、納めすぎた額をいったん勤務先へ還付し、勤務先から本人へ渡す方法をとっています。勤務先が申し出れば、本人へ直接還付する扱いに切り替えられます。過年度分は、勤務先を通さず本人へ戻ります。
これは詐欺ではないか、と思ったら
役所から身に覚えのない書類が届き、「還付」と書かれていれば、不安に感じることもあります。実際、窓口には「これは詐欺ではないですか」という電話がかかってきました。
市区町村が還付のためにATMを操作させることは絶対にありません。警察庁は、自治体・税務署・年金事務所の職員を名乗る人物が電話でATMの操作を指示し、振り込ませる手口を還付金詐欺として注意喚起しています。「期限が近い」と焦らせて、携帯電話を持って今すぐATMへ向かうよう指示するのが典型です。
- ATMへ行くように言われたら、その時点で詐欺です。本物の手続きにATMは出てきません
- 本物の手続きは、市区町村からの書面や口座への振り込みで進みます。受け取り方は市区町村や勤め先によって変わります
- 電話がかかってきたら、いったん切って、自分で調べた市区町村の代表番号にかけ直してください
私のいた窓口にも、電話帳やインターネットで市役所の番号を調べ、自分で電話をかけた人がいました。代表番号へかけた電話が私に取り次がれ、書類の内容を説明すると納得してもらえました。
届いた書類が本物か迷ったときは、市役所へ自分でかけ直して確かめるのが適切です。
手続きが途中で止まるとき
還付の手続きは、書類が返送されないときと、口座へ振り込めなかったときに止まります。
還付請求書が返ってこない場合
毎月、還付請求書が返送されないケースがありました。その場合は請求書を再送し、連絡先が分かっていれば電話をかけていました。それでも返事がなければ、市役所だけでは手続きを進められません。
請求権には期限があります。地方税法第18条の3は、還付金を請求できる日から5年で時効になると定めています。市区町村の案内では、還付通知書を出した日から5年としているところもあります。
住民税が戻る心当たりがあるのに書類が見つからないなら、住んでいる市区町村の税の担当課に問い合わせてください。
振込先の口座が使えなかった場合
解約した口座の情報を書いた場合など、振り込めないことがあります。このときは、次のように処理していました。
- 金融機関から市の会計担当へ、振り込めなかったという連絡が入る
- 会計担当から税務課へ連絡が回る
- 担当者が、還付請求書に書かれた電話番号へ連絡する
- 本人に口座を確かめ、会計担当へ連絡し、あらためて振り込む
電話がつながれば数日後には振り込まれますが、連絡がつかない場合は口座を確認できず、手続きが止まります。
ただし、この連絡でATMの操作を求めることはありません。電話で口座番号を聞かないと決めている市区町村もあります。かかってきた電話で伝える必要はないので、いったん切って、自分で調べた番号へかけ直してください。
使っていない口座を解約する前に、入金の予定がないかを確かめてください。手続きの順番を、「使わない銀行口座の解約」に書いています。
所得税の還付とどう違うか
所得税の還付は税務署が、住民税の還付は市区町村が、それぞれ手続きを進めます。同じ確定申告がもとになっていても、振り込まれる時期はそろいません。
- 所得税
確定申告書に書いた口座へ、税務署から振り込まれます。あらためて書類を出す必要はありません - 住民税
市区町村から還付請求書が届き、それを返送してから振り込まれます。給与から天引きされている人は戻り方が違います
住民税の還付は、市区町村へ申告データが送られてから、月1回の締めと書類のやり取りを挟むため、所得税より振り込みが遅くなります。
所得税の還付時期を、「確定申告の還付金はいつ振り込まれる?」にまとめています。
よくある質問
確定申告をすれば、住民税の還付も自動で振り込まれますか?
多くの市区町村では自動ではありません。住民税還付請求書が届き、それに振込先を書いて返送してから振り込まれます。ただし住民税を口座振替で納めている場合など、返送なしで登録口座へ振り込む市区町村もあります。給与から天引きされている人は、還付ではなく天引き額の調整になることが多いです。所得税の還付金は申告書に書いた口座へそのまま振り込まれ、住民税とは手続きが異なります。
還付請求書を返送しないままだと、どうなりますか?
還付の手続きは進みません。市区町村は請求書を再送したり、連絡先が分かれば電話をかけたりしますが、返事がなければそれ以上は進められません。請求権は、還付金を請求できる日から5年で時効になります(地方税法第18条の3)。市区町村の案内では、還付通知書を出した日から5年としているところもあります。
待たされたぶん、利息のようなものはつきますか?
還付加算金という制度があります(地方税法第17条の4)。割合は年ごとに決まっていて、令和8年中は年1.3%です。ただし計算した額が1,000円未満のときは加算されないので、数万円の還付では付かないことも多いです。付くときは通知に記載されるので、届いた書類で確認してください。
2か月を過ぎても振り込まれません。どうすればいいですか?
まず、還付請求書を受け取り、必要事項を記入して提出したか確認してください。振り込みが終わったことを別に知らせない市区町村もあります。通帳を記帳して、入金がないかも見てください。返送済みなら、住んでいる市区町村の税の担当課に問い合わせます。届いていない場合は、市役所での処理が月締めに間に合わず、請求書の発送が翌月に回った可能性があります。給与から天引きされている人は、そもそも請求書が届かず、天引き額の調整になっていることもあります。問い合わせるときに確定申告をした時期を伝えると、担当者が状況を早く確認できます。
還付の連絡だという電話がかかってきました。本物ですか?
ATMの操作を指示されたら詐欺です。市区町村が還付のためにATMを操作させることはありません。判断に迷うときは、いったん電話を切って、自分で調べた市区町村の代表番号にかけ直してください。
還付通知書と還付請求書は、何が違うのですか?
還付通知書は、還付になることを知らせるだけの書類です。還付請求書は、振込先の口座を書いて返送する書類で、これを返さないと振り込みの手続きは進みません。時効の起算点を、還付通知書を出した日としている市区町村もあります。
まとめ
還付は、その年の住民税を納めたあとに確定申告をし、税額が下がった場合などに起こります。税務署での受付、市区町村への回送、課税の確認、月に1回の締め、事務処理、書類の往復が続くため、確定申告から振り込みまで早くても2か月ほどかかります。給与から天引きされている人は、還付ではなく、残りの月の天引き額が調整されることが多いです。
待ち時間を大きく左右するのは月締めに間に合ったかどうかで、ここで1か月近く差がつきます。振り込まれない主な原因は、還付請求書を返送していないことと、振込先の口座が使えないことです。どちらも、市区町村と連絡が取れれば手続きを再開できます。
また、還付を口実にATMを操作させる電話は詐欺です。迷ったら電話を切って、自分で調べた市区町村の番号にかけ直してください。市区町村が案内している期間を過ぎても振り込まれないときも、同じ番号に連絡してください。
※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年9月)の情報です。締めの回数や時期、還付の事務の進め方は自治体によって違います。個別の状況は、お住まいの市区町村の税の担当課にご確認ください。
参考:e-Gov法令検索「地方税法」/総務省「加算金、延滞金、還付加算金」/警察庁「還付金詐欺」/大阪市「特別徴収税額の通知および納入について」/宝塚市「修正申告により住民税の税額が減額になり、還付金を受け取る場合」/生駒市「市税の還付について」/名古屋市「市税の還付手続き(郵送での申請)」/横浜市「還付通知書を受け取りました。何か手続きが必要ですか」

