源泉徴収票がなくても、確定申告はできる
交付期限前、会社の倒産・廃業、業務委託のときは、源泉徴収票をもらえない。
確定申告のときに、源泉徴収票をなくしたり、会社からもらえなかったりする人がいます。私は市役所の税務窓口で確定申告を1,000件以上受け付け、どちらのケースにも実際に対応しました。給与明細などの数字があれば申告できます。
この記事でわかること
- 2019年4月以降、確定申告書への源泉徴収票の添付は不要。ただし支払金額・源泉徴収税額・社会保険料の額は必要
- 交付の期限は在職中なら翌年1月31日、退職なら退職から1か月以内。過ぎても届かないなら催促できる
- 紛失したら会社へ再発行を依頼し、もらえないときは給与明細を集計して申告する。私のいた窓口はこの方法で受け付けていた
- 勤め先が給与支払報告書を提出していれば、市区町村には同じ内容が届いている
- 会社が応じないときは税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」。勤め先がe-Taxで出していればマイナポータル連携でも取り込める
必要なのは源泉徴収票ではなく、そこに載っている数字
2019年4月から、確定申告書に源泉徴収票を添付する必要はなくなりました。申告書に必要なのは、源泉徴収票に載っている支払金額、源泉徴収税額、社会保険料の額です。これらの正確な金額が分かれば、申告書を作れます。生命保険料控除の額や扶養親族の情報などは、年末調整を受けていれば源泉徴収票にも載りますが、給与明細には載りません。各種控除は、証明書や扶養の状況をもとに申告書へ書きます。
なお、国税庁は、税務署や自治体の会場で申告書を作ってもらうときに、源泉徴収票を持参するよう案内しています。手元にないときは、給与明細など金額の分かる資料を代わりに用意してください。
源泉徴収票がないときの対応は、再発行の依頼、給与明細の集計、市区町村への確認、税務署への届出、マイナポータル連携での取り込みの5つです。
なくした場合:まず再発行を頼む
勤め先に再発行を頼んでください。給与の担当部署は、人事・経理・総務などです。退職した会社にも依頼できます。会社には源泉徴収票を交付する義務があり、退職者には退職後1か月以内に渡すことになっています。いつまでに送ってほしいかを伝え、メールなど記録が残る方法で依頼してください。会社が応じないときに税務署へ出す届出書に、その記録を添えられます。
窓口でも、なくした人には「会社から源泉徴収票をもう一度もらってください」と案内していました。会社から再発行されれば、源泉徴収票を使って申告できます。公的年金の源泉徴収票をなくした場合は、会社ではなく日本年金機構へ依頼します。ねんきんネット、ねんきん自動音声送付受付サービス(電話)、年金事務所で再交付を申し込めます。
もらえない場合:給与明細を合計する(窓口の実務)
再発行を頼んでも、源泉徴収票をもらえない場合があります。給与明細では申告できないと思われがちですが、私のいた窓口では給与明細による申告を受け付けていました。
源泉徴収票をもらえない3つの理由
どの理由に当てはまるかによって、必要な手続きが変わります。
- 交付の期限がまだ来ていない
在職中なら翌年1月31日、退職なら退職から1か月以内が期限です - 会社の倒産・廃業で発行されない
破産手続き中なら、破産管財人に発行を頼める場合があります - 業務委託として扱われている
給与ではないので、源泉徴収票は交付されません
毎月の給与明細を持参してもらい、支払金額、所得税、社会保険料をそれぞれ合計して申告書に記載していました。給与明細を1年分持参する人は、年に数名いました。会社が倒産して源泉徴収票を受け取れなくなった人も、実際にいました。ただし、窓口の運用は自治体や税務署によって異なるため、同じ対応になるとは限りません。
自分で集計する場合も、確認する項目は同じです
1月から12月までの給与明細を並べて、支払金額(総支給額のうち課税対象のもの)、源泉徴収された所得税、天引きされた社会保険料を、それぞれ合計します。賞与があった人は、賞与明細の分も忘れずに足してください。
| 必要になる数字 | 給与明細のどこを見るか | 注意 |
|---|---|---|
| 支払金額 | 総支給額のうち課税対象の分 | 通勤手当の非課税分は入れません |
| 源泉徴収税額 | 控除欄の「所得税」 | 住民税は入れません |
| 社会保険料 | 健康保険+厚生年金+雇用保険 | 40歳から64歳の人は介護保険も足します。所得税・住民税は入れません |
賞与の明細でも、支払金額、所得税、社会保険料をそれぞれ合計します。
その年に年末調整を受けていた場合は、12月か翌1月の給与に還付額か追加徴収額が反映されています。各月の所得税だけを合計すると、年末調整後の源泉徴収税額とずれます。明細に年末調整の欄があれば、各月の所得税の合計に、記載された増減額を足し引きしてください。どう扱うか分からなければ、集計した表を持って税務署に相談してください。
明細がそろわない場合は、給与の振込記録も手がかりになりますが、税額や社会保険料の確認には時間がかかります。振込額は社会保険料や税金を引いたあとの手取りなので、そのまま支払金額として使えません。手元の書類だけで申告できるか不安なら、資料を持って税務署か申告期間中の自治体窓口で相談してください。税務署と自治体窓口で受けられる相談の違いは「確定申告の相談先は市役所か税務署か」で説明しています。
市区町村には「給与支払報告書」で同じ内容が届いています
会社は、源泉徴収票と同じ内容を記載した「給与支払報告書」を、1月1日に住んでいた市区町村へ提出しています。期限は1月31日です。給与支払報告書は、税務署へ出す源泉徴収票と違い、会社が原則として働いていた人全員分を提出します。
令和9年(2027年)1月1日からは、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署にも源泉徴収票を出したものとみなされます。会社が本人に源泉徴収票を交付する義務は、そのまま残ります。
ただし、年の途中で辞め、その年の給与が30万円以下の人については、会社は出さなくてもよいことになっています(地方税法第317条の6)。
私は市役所で、11月ごろに会社へ給与支払報告書の提出を依頼し、翌年1月に届いた分を全件確認していました。
手元に源泉徴収票がなくても、勤め先が給与支払報告書を提出していれば、市区町村には同じ内容が届いています。窓口で相談するときは、市区町村に給与支払報告書が届いているか職員に確認してください。源泉徴収票の未交付だけでは、給与支払報告書の提出状況は判断できません。源泉徴収票も給与支払報告書も出ていないときは、住民税の申告が必要になることがあります。その条件は「住民税の申告が必要になる場合」に書いています。
会社が応じないとき:源泉徴収票不交付の届出書
会社が源泉徴収票を交付してくれないときは、自分の納税地(会社員なら住所地)を所轄する税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。交付の期限は、在職中なら翌年1月31日、退職したなら退職から1か月以内です。源泉徴収票がこの期限を過ぎても届かないときに、届出書を出します。
添えるのは、勤務先に交付を求めたことが分かる書類と、残っていれば給与明細の写しです。届出書は、e-Taxソフトから送信するほか、印刷した様式を税務署へ持参するか郵送して提出できます。
届出を受けた税務署が、会社に源泉徴収票を交付するよう指導します。ただし、この指導に法律上の強制力はありません。源泉徴収票を期限までに交付しないこと自体には、罰則があります(所得税法第242条第6号・1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。
届出書を提出したあとも、必要に応じて会社への連絡を続けます。会社が倒産しているときや、会社と連絡が取れないときも出せます。会社が破産手続きに入っているなら、裁判所が選任した破産管財人に源泉徴収票の発行を依頼できる場合もあります。連絡先は、裁判所に尋ねるか、債権者あてに届いた通知で確認できます。
この届出書は税務署へ提出するため、私は市役所の窓口で扱ったことはありません。申告相談では、給与明細の金額を合計して申告書を作成していました。源泉徴収票不交付の届出書は、税務署から会社へ交付を指導してもらうために出す書類です。
マイナポータル連携で取り込める場合
勤め先がe-Taxで源泉徴収票を税務署へ提出していれば、そのデータを確定申告書等作成コーナーへ取り込んで金額を自動入力できます(令和5年分以降)。マイナンバーカードを使ってe-Taxで申告すると、マイナポータル連携を利用できます。紙の源泉徴収票がなくても、取り込んだ数字で申告できます。
ただし、税務署へ源泉徴収票を提出している会社は限られます。源泉徴収票を交付しない会社や、倒産している会社は、税務署にも提出していないことがあります。
取り込みの対象になっているかは、確定申告書等作成コーナーでマイナポータル連携をすると確認できます。対象のデータがなければ給与情報は自動入力されないので、そのときは再発行を依頼するか、給与明細の金額を合計して申告してください。マイナンバーカードを使う場合の手続きは、「e-Taxで申告するとどう変わるか」を見てください。
よくある質問
給与明細もありません。どうすればいいですか?
給与の振込記録(通帳やアプリの履歴)が手がかりになりますが、社会保険料や源泉徴収税額までは分かりません。手元にある資料をすべて持って、税務署か自治体の申告相談窓口で相談してください。資料が少ない場合は、窓口の職員が書類から分かる金額を確認し、不足する情報を本人から一つずつ聞き取ります。
手書きの源泉徴収票をもらいました。有効ですか?
有効です。小さな会社では手書きのこともあります。私も窓口で、手書きの源泉徴収票を使った申告を受け付けていました。数字が合っていれば、手書きでも問題ありません。支払金額と源泉徴収税額の計算が合わない源泉徴収票もありました。そのときは、給与の支払額を基準に源泉徴収税額を計算し直していました。
年金の源泉徴収票をなくしました。申告できませんか?
できます。再交付は、日本年金機構のねんきんネット、ねんきん自動音声送付受付サービス(電話)、年金事務所で申し込めます。私のいた市役所の申告相談では、公的年金の支払い情報が事前に届いていたので、源泉徴収票をなくした人の申告も、その情報を確認して受け付けていました。運用は自治体によりますが、なくしたからといって申告できなくなるわけではありません。
添付が不要なら、数字はだいたいで書いてもいいですか?
概算ではなく、確認できる正確な金額を記載します。勤め先が税務署へ源泉徴収票を出し、市区町村へ給与支払報告書を出していれば、申告書に書いた数字は後で照合されます。金額が違っていると、確認の連絡が入ったり、還付に時間がかかったりすることがあります。数字が分からないときは、再発行を頼むか、給与明細の金額を集計してください。
退職した会社が源泉徴収票をくれません。義務ではないのですか?
会社には交付する義務があり、退職者には退職後1か月以内に交付することになっています。まず会社に催促し、それでも応じなければ、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出して会社への指導を求められます。申告書は、給与明細の金額を合計して作成できます。
転職先から前の会社の源泉徴収票を出すように言われました。ないとどうなりますか?
転職先が源泉徴収票を求めるのは、年末調整のためです。前職分と現職分を合わせて計算するので、前職の源泉徴収票を確認できないと、転職先では年末調整ができません。自分で確定申告して、所得税の過不足を精算します。まず前の会社に再発行を頼み、年末調整に間に合わないときは、そのことを転職先に伝えてください。
業務委託で働いていますが、源泉徴収票が届きません。
源泉徴収票は、会社が給与を支払った人に交付する書類です。業務委託の報酬では支払調書が使われますが、本人への交付は法律で義務づけられていません。支払調書が届かなくても違法ではなく、実際に送られないこともあります。請求書の金額と、そこから差し引かれた源泉徴収税額(請求額と入金額の差)をそれぞれ集計して申告してください。報酬から税金が引かれていない場合は、源泉徴収税額を0円として申告します。源泉徴収された税金の申告方法は「副業の確定申告で損する人・危ない人」にも書きました。
まとめ
源泉徴収票がない場合は、まず給与明細を1年分そろえます。支払金額、社会保険料、源泉徴収税額をそれぞれ合計すれば、源泉徴収票がなくても申告書は作れます。私のいた窓口では、その方法で受け付けていました。
※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年9月)の情報です。手続きや窓口の運用は変わることがあります。個別の判断に迷うときは、税務署や税理士に相談してください。
参考:国税庁「平成31年(2019年)4月1日以後に確定申告書等を提出する場合の添付書類について」/e-Gov法令検索「所得税法」(第226条・源泉徴収票の交付、第242条・罰則)/国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」/国税庁「マイナポータル連携で給与所得の確定申告がさらに簡単に!」/日本年金機構「公的年金等の源泉徴収票をなくしたとき」/e-Gov法令検索「地方税法」(第317条の6・給与支払報告書)/国税庁「No.2668 年末調整の対象となる人」/国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例」

