源泉徴収票の添付は不要だが、正確な金額は必要
入手が間に合わないときは、給与・賞与明細などをそろえて税務署へ相談する。
私は市役所の税務窓口で、源泉徴収票がない人の給与明細を確認し、申告書を一緒に作成したことがあります。確定申告が必要な人に向けて、紛失と未交付で異なる手続き、期限前の相談準備、給与明細のどの数字を使うかを説明します。
この記事でわかること
- 源泉徴収票の添付は不要でも、正確な給与額・税額などは必要。手取り額をそのまま使うことはできない
- 紛失は勤務先へ再発行を依頼。交付期限を過ぎても未交付なら、勤務先へ請求し、応じなければ税務署へ届け出る
- 申告が必要で入手が間に合わないときは、給与・賞与明細や依頼の記録をそろえ、期限前に税務署へ相談する
- 転職先の源泉徴収票に前職分が含まれていれば、前職の源泉徴収票や給与明細の金額を重ねて加算しない
源泉徴収票がないときは、状況別に手続きを選ぶ
給与所得の源泉徴収票は、2019年4月から確定申告書への添付・提示が不要になっています。ただし、申告書には支払金額、源泉徴収税額、社会保険料の額などを正確に記載する必要があります。
紙が見当たらないときは、勤務先の給与システムやメールによる電子交付を確認します。一度も交付されていないのか、交付後になくしたのかによって、その後の手続きが異なります。
| 手元にない理由・今の状況 | 進め方 |
|---|---|
| 電子交付されている | 給与システムなどでデータを確認します。アクセスできない場合や書面が必要な場合は、勤務先へ書面での交付を請求できます。 |
| 一度受け取ったが、なくした | 勤務先へ再発行を依頼します。退職した会社にも依頼できます。 |
| 一度も受け取っていない | 勤務先へ発行状況を問い合わせます。交付期限を過ぎても請求に応じてもらえなければ、税務署への不交付の届出を検討します。 |
| 申告期限が近いのに、入手の見通しがない | 申告が必要な人は、票の到着を待つだけにせず、手元の資料と不足している情報を税務署へ伝え、期限前に相談します。 |
| 業務委託などの報酬として受け取っている | 給与に当たるかを働き方の実態で確認します。給与以外の報酬なら給与の源泉徴収票は交付されません。報酬の確認方法はFAQで説明しています。 |
在職者への交付期限は原則として翌年1月31日で、2026年分は2027年2月1日です。退職者には退職後1か月以内に交付することになっています。
源泉徴収票の入手が申告期限に間に合わないときの相談準備
源泉徴収票がないこと自体で、確定申告の義務が決まるわけではありません。申告義務がある人は、交付や再発行を待つだけにせず、期限前に所轄税務署へ相談してください。所轄税務署は、自分の納税地(通常は住所地)を担当する税務署です。2026年分の所得税の確定申告・納税の期限は、2027年3月15日です。
年末調整を受けていなくても、全員に確定申告の義務があるわけではありません。申告義務がなく、払い過ぎた所得税を返してもらう「還付申告」をする場合は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。
勤務先へ交付または再発行を求めても入手が間に合わない場合は、次の資料をそろえます。足りないものがあるときは、その内容も相談先へ伝えます。
- 原則として支給日が申告対象の年に入る給与明細一式と、賞与があれば賞与明細
- 給与・賞与の振込記録
- 勤務先へ交付や再発行を頼んだ記録と、勤務先からの回答
- 生命保険料控除などに使う証明書と、扶養親族などの情報
国税庁は、税務署等で申告書を作成する場合には源泉徴収票を持参するよう案内しています。入手できない事情を伝え、手元の資料で相談できるか、追加で何が必要かを所轄税務署または利用予定の申告会場へ事前に確認してください。給与明細の支払金額・所得税・社会保険料の見方は、後の章で説明します。
勤務先が一度も交付していない場合に出す「源泉徴収票不交付の届出書」は、確定申告そのものではありません。届出だけで申告が済むわけではないため、申告に使える資料と進め方も税務署へ相談します。
出典
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 「還付申告」
- 「申告と納税」
なくした場合:勤務先へ再発行を頼む
一度交付された源泉徴収票をなくした場合は、勤務先に再発行を依頼します。給与の担当部署は、人事・経理・総務などです。退職した会社にも依頼できます。いつまでに送ってほしいかを伝え、メールなど記録が残る方法で依頼してください。一度交付された源泉徴収票の再発行は、「源泉徴収票不交付の届出書」の対象外です。
窓口でも、なくした人には勤務先へ源泉徴収票の再発行を依頼するよう案内していました。
一度も交付されていない場合:源泉徴収票不交付の届出書
「源泉徴収票不交付の届出書」は、交付期限を過ぎても源泉徴収票が一度も交付されていない場合に提出できます。在職者の交付期限は原則翌年1月31日(2026年分は2027年2月1日)、退職者は退職後1か月です。一度交付された源泉徴収票の再発行は、この手続きの対象外です。
期限を過ぎても交付されない場合は、まず勤務先に交付を求めます。メールや書面など、依頼した日と内容が残る方法を使います。電話や面談で依頼した場合も、日時・場所・相手・方法・回答内容をメモに残します。応じてもらえなければ、自分の納税地を所轄する税務署へ届出書を提出できます。
届出書には、残っている給与明細の写しを添えます。勤務先へ交付を求めたことが分かる書類がある場合は、その写しも添付します。
届出書はe-Taxソフトから送信するほか、税務署への持参または郵送でも提出できます。書面で提出する場合は、国税庁の手続ページで現行様式を確認できます。
届出後は、税務署が勤務先へ源泉徴収票を交付するよう行政指導します。この行政指導には法律上の拘束力がなく、勤務先の自主的な協力を前提としています。届出後も勤務先へ交付を求めます。
届出書の提出自体は確定申告ではありません。申告期限が近い場合は、申告に使える資料と進め方も税務署へ確認してください。
出典
- 国税庁 「源泉徴収票不交付の届出書」を提出される前に、ご確認ください。(PDF)
会社が倒産して連絡できない場合も、一度も交付されていなければ税務署へ状況を伝えます。
この届出書の提出先は税務署であり、私が市役所の窓口で扱うことはありませんでした。
給与・賞与明細で確認する金額と、集計時の注意点
給与・賞与明細では、課税対象の支払金額、所得税、社会保険料を分けて確認します。ただし、給与明細だけで、年末調整を受けた源泉徴収票に載る生命保険料控除や扶養親族などの情報をすべて確認できるとは限りません。各種控除は、証明書や扶養の状況をもとに申告書へ記載します。
私のいた窓口では、毎月の給与明細を持参してもらい、支払金額、所得税、社会保険料をそれぞれ確認し、申告書を作成していました。会社の倒産により源泉徴収票を受け取れなかった人にも実際に対応しました。
前職分が含まれていれば、重ねて加算しない
転職した人は、転職先の源泉徴収票に前職分が含まれているか確認してください。前職分を含めて年末調整されている場合は、前職の源泉徴収票や給与明細の金額を重ねて加算しません。不明な場合は、転職先の給与担当者に確認してください。
出典
- 国税庁「中途就職者の源泉徴収票の記載」
支給日で対象年を確かめ、支払金額・所得税・社会保険料を分ける
申告する給与の年分は、働いた月ではなく、原則として支給日をもとに確かめます。12月勤務分でも、支給日が翌年1月なら翌年分です。賞与があった人は賞与明細もそろえます。
| 必要になる数字 | 給与明細のどこを見るか | 注意 |
|---|---|---|
| 支払金額 | 総支給額のうち課税対象の分 | 通勤手当の非課税分は入れません |
| 源泉徴収税額 | 控除欄の「所得税」 | 住民税は入れません |
| 社会保険料 | 健康保険+厚生年金+雇用保険 | 介護保険料が別項目で天引きされていれば加えます。所得税・住民税は入れません |
年末調整の精算額・未払給与・振込額を単純に足さない
年末調整の還付額や追加徴収額が給与明細に反映されることがありますが、表示名やプラス・マイナスの表し方は勤務先によって異なります。表示だけで判断して足し引きせず、分からないときは勤務先へ内訳を確認します。
倒産などで未払給与がある場合は、明細や振込額を単純に合計するだけでは判断できません。未払額が分かる資料もそろえます。
給与の振込記録も手がかりになりますが、振込額は社会保険料や税金を引いたあとの手取りなので、そのまま支払金額にはできません。
金額を確認できない場合や未払給与がある場合は、推測せず、手元の資料と確認できていない金額を所轄税務署へ伝え、申告に使える資料と進め方を確かめてください。税務署と自治体窓口で受けられる相談の違いは「市役所と税務署どっち?」で説明しています。
給与情報をマイナポータル連携で取り込める条件
勤務先が給与所得の源泉徴収票をe-Tax(国税の電子申告システム)または認定クラウド等で税務署へ提出している場合は、給与情報を確定申告書等作成コーナーへ取り込めます。ただし、その源泉徴収票に必要な本人情報が正しく記載されていることも条件です。
対象は2023年(令和5年)分以後の給与情報で、利用にはマイナンバーカードを使ったe-Tax申告が必要です。
利用前に、e-Taxとマイナポータルを連携し、e-Taxのマイページで給与情報の取得希望を登録して、カナ氏名やマイナンバー等を提供します。勤務先が提出するデータにも、マイナンバー、氏名・フリガナ、住所、生年月日等が正しく記載されている必要があります。
2027年1月1日以後に、勤務先が2026年分以後の給与支払報告書をeLTAX(地方税の電子申告システム)で市区町村へ提出した場合も、マイナポータル連携の対象になります。2027年2月以降、勤務先の提出後に順次利用できます。書面や光ディスク等で提出されたものは対象外です。勤務先から本人への源泉徴収票の交付義務は引き続き残ります。
給与情報が表示されない場合は、事前準備を見直し、勤務先にもオンラインでの提出状況を確認します。源泉徴収票も入手できないときは、勤務先へ再発行または交付を求め、申告に必要な資料を税務署へ確認してください。
マイナンバーカードを使う場合の手続きは、「紙とe-Taxどっちで申告?」で説明しています。
市区町村に給与支払報告書があっても、源泉徴収票は再発行されない
市区町村に給与支払報告書が届いていても、源泉徴収票を市区町村から再発行してもらうことはできません。
勤務先は原則として、源泉徴収票と同じ内容を記載した給与支払報告書を市区町村へ提出します。在職者の提出先は給与を受けた年の翌年1月1日現在の住所地、中途退職者の提出先は退職時の住所地です。提出期限は原則翌年1月31日で、2026年分は2027年2月1日です。
年の途中で退職し、その年の給与の支払額が30万円以下の人については、勤務先に給与支払報告書の提出義務がない場合があります。
2027年1月1日以後に市区町村へ提出する2026年分以後の給与支払報告書は、提出方法を問わず、税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。勤務先から本人へ源泉徴収票を交付する義務は、この取扱いが始まった後も残ります。
私は市役所で、会社へ給与支払報告書の提出を依頼し、届いた分を確認していました。
給与支払報告書や源泉徴収票の提出状況、提出方法、記載内容は、勤務先へ確認します。国税庁は、市区町村や税務署へ問い合わせても、これらには回答できないと案内しています。申告相談を利用できるか、何を持参するかの確認とは分けて考えてください。
市区町村の申告相談を利用する場合は、源泉徴収票が手元にない事情を伝え、必要な資料と相談方法を事前に確認してください。退職後に引っ越している人は、給与支払報告書の提出先が現在住んでいる市区町村とは限りません。
給与支払報告書が提出されておらず、所得税の確定申告もしていない場合は、住民税の申告が必要になることがあります。その条件は「住民税の申告だけ必要な人は?」で説明しています。
よくある質問
給与明細もありません。どうすればいいですか?
給与の振込記録は手がかりになりますが、手取り額だけでは支払金額、社会保険料、源泉徴収税額を確認できません。勤務先に源泉徴収票や給与明細の交付を求めます。入手できない場合は、雇用契約書、振込記録、勤務先とのやり取りなど、手元にある資料をそろえ、申告に必要な資料を所轄税務署へ確認してください。確認できない金額は、推測で記載しません。
手書きの源泉徴収票をもらいました。有効ですか?
手書きであることだけを理由に無効にはなりません。給与支払者が作成・交付した源泉徴収票について、必要事項と金額を確認します。私も窓口で、手書きの源泉徴収票を使った申告を受け付けていました。給与明細などと金額が合わない場合は勤務先に確認し、記載誤りがあれば訂正版の交付を依頼してください。
年金の源泉徴収票をなくしました。申告できませんか?
できます。再交付は発行元へ依頼します。日本年金機構が発行したものは、ねんきんネット、ねんきん自動音声送付受付サービス(電話)、年金事務所で申し込めます。
私のいた市役所の申告相談では、公的年金の支払い情報が事前に届いていたので、源泉徴収票をなくした人の申告も、その情報を確認して受け付けていました。運用は自治体によりますが、なくしたからといって申告できなくなるわけではありません。
添付が不要なら、数字はだいたいで書いてもいいですか?
概算ではなく、確認できる正確な金額を記載します。勤務先が税務署へ源泉徴収票を提出し、市区町村へ給与支払報告書を提出していれば、申告内容が後で照合される場合があります。数字が分からないときは、勤務先へ交付または再発行を依頼するか、手元の資料で相談できるか所轄税務署に確認してください。
退職した会社が源泉徴収票をくれません。義務ではないのですか?
会社には源泉徴収票を交付する義務があり、退職者には退職後1か月以内に交付することになっています。交付期限を過ぎても一度も受け取っていない場合は、まず会社に交付を求め、応じてもらえなければ税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。一度交付されたものを紛失した場合は対象外です。申告に必要な資料は所轄税務署へ確認してください。
転職先から前の会社の源泉徴収票を出すように言われました。ないとどうなりますか?
転職先が源泉徴収票を求めるのは、前職分と現職分を合わせて年末調整するためです。まず前の会社に交付または再発行を依頼し、年末調整に間に合わないときは、そのことを転職先に伝えてください。
年末調整を受けられなかった場合は、確定申告が必要か確認します。申告義務がある場合は期限内に申告し、申告義務がなく税金の払い過ぎがある場合は、還付申告で精算できます。還付申告は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。
業務委託で働いていますが、源泉徴収票が届きません。
契約の名前だけで判断せず、実際の働き方から確認します。雇用契約やそれに近い関係で受け取る給与か、独立して仕事を引き受ける請負・委任などの報酬かを区別します。独立した仕事への報酬には、給与所得の源泉徴収票は交付されません。報酬の種類によっては源泉徴収の対象外です。
報酬等の支払調書は、支払者が報酬額などを税務署へ報告する書類で、本人への交付は義務づけられていません。
確定申告では、請求書、支払明細、入金記録などから報酬額と実際に源泉徴収された税額を確認します。請求額と入金額の差だけを源泉徴収税額とせず、内訳が分からない場合は報酬の支払者に確認してください。源泉徴収された税金の申告方法は「副業の経費はどこまで?」でも説明しています。
まとめ
申告が必要で、勤務先へ交付や再発行を求めても入手が申告期限に間に合わない場合は、給与・賞与明細や依頼の記録など、手元の資料をそろえて期限前に所轄税務署へ相談します。源泉徴収票がない事情と確認できていない金額を伝え、申告に使える資料と進め方を確かめます。
※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年10月)の情報です。手続きや窓口の運用は変わることがあります。個別の判断に迷うときは、税務署や税理士に相談してください。
出典
- 国税庁「申告書の提出」
- 国税庁「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A」
- 国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」
- 国税庁「給与所得の源泉徴収票」
- 国税庁「翌年1月10日に支給する給与の年末調整」
- 国税庁「給与が一部未払の場合の源泉徴収」
- 国税庁「給与所得の源泉徴収票の提出範囲と提出枚数等」
- 国税庁「給与情報のマイナポータル連携に関するFAQ(利用者向け)」
- 国税庁「給与所得の源泉徴収票情報の取得に当たっての事前準備」
- 国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例」
- 国税庁「法定調書に関するFAQ」
- 国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
- 日本年金機構「公的年金等の源泉徴収票をなくしたとき」
- 国税庁「令和8年分年末調整のしかた」

