年末調整されなかった給与収入などが20万円を超えても、確定申告が義務とは限らない
居住者で給与以外の所得がなく、全勤務先の給与収入合計が178万円以下なら、2026年・2027年分の所得税等の年税額は0円。
年末調整されなかった給与収入が20万円を超えても、確定申告で所得税等が戻ることがあります。私は市役所の税務窓口で、源泉徴収票を2枚持参した人や、勤務先が申告まで済ませたと思っていた人にも対応していました。源泉徴収票の金額を本文の条件に当てはめると、申告義務や還付の有無を判断できます。
この記事でわかること
- 2か所以上からの給与がすべて源泉徴収の対象なら、年末調整されなかった給与収入と給与・退職所得以外の所得が計20万円超で原則申告
- 20万円を超えても、申告すると還付になる人は申告義務の対象外。還付を受けるには自分で申告が必要
- 2026年・2027年分は、居住者で給与所得だけなら全勤務先の給与収入合計178万円以下で所得税等の年税額は0円。住民税は別判定
- 前職分が現在の勤務先の年末調整に含まれるか確認し、通算済みなら給与収入の合計にも申告書にも二重計上しない
確定申告が必要かは、20万円だけでは決まらない
国税庁のタックスアンサーNo.1900では、給与を2か所以上から受け、すべての給与が源泉徴収の対象となっている人について、次の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要だとしています。
- 年末調整されなかった給与の収入金額
- 給与所得・退職所得以外の所得金額
給与は、給与所得控除などを引く前の「収入金額」で判定します。給与所得控除は、給与所得を計算するときに、給与収入に応じて差し引く金額です。
ネットショップや原稿料など給与以外の収入は、原則として必要経費を引いた「所得金額」で判定するため、同じ20万円でも見る金額が違います。
源泉徴収は、勤務先などが給与を支払うときに税額を計算し、給与から差し引いて国へ納める仕組みです。実際に所得税等が天引きされたかどうかではなく、その給与が源泉徴収の対象かどうかを確認します。
源泉徴収票は、勤務先がその年の給与や所得税等の金額を記載して渡す書類です。
税務窓口では、「収入」と「所得」を取り違えた人からの相談を受けました。源泉徴収票で給与収入を確認するときは、「支払金額」の欄を見ます。
20万円を超えても申告義務がない場合
タックスアンサーNo.1900は、条件に当てはまる給与所得者のうち、確定申告をすれば税金が還付される人を申告義務の対象から除いています。
「乙欄」は、扶養控除等申告書を提出していない勤務先の給与に使う税額表の欄です。乙欄で所得税等を引かれ、2か所の給与を合算すると還付になる人は、20万円を超えただけで期限内申告が義務になるわけではありません。還付を受けるには、自分で還付申告をします。
所得控除は、税金の計算対象となる所得から差し引く金額で、基礎控除や社会保険料控除などがあります。
また、給与収入の合計額から所得控除の合計額を引いた残額が150万円以下で、給与・退職所得以外の所得が20万円以下なら、申告が不要になる場合があります。この計算では、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除の4つを所得控除の合計額に含めません。
一方、給与収入の合計が2,000万円を超える人や、源泉徴収義務のない人から給与を受けた人などには、20万円とは別の申告要件があります。タックスアンサーNo.1900で、自分に当てはまる項目を確認します。
注意
20万円の基準は、一定の給与所得者が確定申告をしない場合の特例です。医療費控除などを受けるために確定申告をする年は、20万円以下の給与収入や給与以外の所得も申告書に記載します。その年は「ふるさと納税のワンストップ特例」も無効になります。
ネットショップや原稿執筆など、給与以外の副業がある場合は、給与だけの人とは申告要否の判定方法が異なります。詳しくは「副業の確定申告で損する人・危ない人」で説明しています。
申告義務がある人と、還付申告をする人の期限
| 区分 | 申告期限 |
|---|---|
| 確定申告の義務がある人 | 原則として対象年の翌年3月15日。土日祝の場合は翌平日 |
| 申告義務がなく、還付を受けるために申告する人 | 対象年の翌年1月1日から5年間 |
還付申告は通常の確定申告期間を待たずに提出できます。ただし、法定申告期限(法律で定められた申告書の提出期限)までの提出が適用要件になっている特例を使う場合は、還付申告でもその期限までに提出する必要があります。
年末調整は1か所だけ。通算済みの前職分は二重に申告しない
年末調整は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した1か所の勤務先で受けます。この勤務先を「主たる勤務先」といいます。年末調整では、勤務先が対象となる給与の1年分の所得税等を計算し、天引き額との差を精算します。
この申告書は、同時に1か所へしか提出できません。申告書を提出していない勤務先から受け取る給与が「従たる給与」で、原則として年末調整されず、「乙欄」で源泉徴収されます。
乙欄では、扶養控除等申告書を提出した人向けの控除が毎月の計算に反映されません。
従たる給与は年末調整されないため、天引きされた所得税等と、すべての給与を合算して計算した年税額との差は、確定申告まで精算されません。天引き額が多ければ還付を受け、少なければ不足分を納めます。
副業先の給与が本業の年末調整の精算対象に入らなくても、基礎控除申告書で年間所得を見積もるときは、副業先を含む全勤務先の給与収入を合算して給与所得を求めます。
退職した勤務先の給与は、通算対象かを確認する
年の途中で勤務先を変えた場合は、年末時点の勤務先の数だけでは、確定申告にどの源泉徴収票を使うかを判断できません。
現在の勤務先で年末調整の対象となる人については、前職で扶養控除等申告書を提出して受け取った給与も、原則として現在の勤務先の年末調整に含まれます。前職の源泉徴収票などで給与、源泉徴収税額、社会保険料等を確認できない場合は、現在の勤務先の給与だけで年末調整を済ませることはできません。本人が確定申告の必要性や還付の有無を確認します。
一方、同時に掛け持ちしていた勤務先から受け取った従たる給与は、原則として現在の勤務先の年末調整に含まれません。申告するときは、その年の源泉徴収票をそろえたうえで、前職分が現在の勤務先の源泉徴収票に通算済みかを確認します。通算済みの場合、前職の源泉徴収票まで入力すると、同じ給与を二重に計上することになります。
通算の有無は、現在の勤務先の源泉徴収票の「摘要」欄や給与担当者への確認で判断します。
給与合計178万円以下で所得税等が0円になる条件
日本の居住者で給与以外の所得がなく、すべての勤務先の給与収入を合計して178万円以下なら、2026年分・2027年分の所得税等の年税額は0円です。給与収入が178万円以下かどうかは、1社ごとではなく、その年の全勤務先分を重複なく合計して判定します。前職分が現在の勤務先の源泉徴収票の「支払金額」に含まれている場合は、前職の票の金額をもう一度足しません。
例えば、日本の居住者で、2026年分の給与がA社120万円、B社50万円、ほかに所得がなければ、給与収入の合計は170万円です。給与所得控除74万円を引いた給与所得96万円より基礎控除104万円が大きいため、所得税等の年税額は0円です。この例では、B社の給与が20万円を超えていても所得税の申告義務はありません。
| 年末調整後に残った源泉徴収税額の合計 | この例の所得税の手続き |
|---|---|
| 15,000円あると仮定 | 申告義務はないが、還付申告をすれば15,000円が戻る |
| 0円 | 申告義務はなく、還付される所得税もない |
前職分を給与収入・源泉徴収税額へ二重に足さず、年末調整ですでに返された税金も含めない例です。住民税の申告が必要かは別に確認します。
2025年分は、給与所得控除の最低保障額65万円と基礎控除の最大95万円だけで、給与収入160万円まで所得税等の年税額が0円になります。
令和8年度の税制改正では、2026年分・2027年分の基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低保障額が74万円です。合計178万円まで課税される所得が0円になるため、所得税等の年税額も0円になります。178万円を超えても、社会保険料控除などによって所得税等の年税額が0円になる場合があります。
2026年分の控除引上げが、年末調整・確定申告に反映される時期
2026年11月までの源泉徴収事務は、引き上げ前の税額表で行われます。改正後の控除額は、2026年12月の年末調整や、その後の確定申告で反映されます。
給与収入の合計が178万円以下で所得税等の年税額が0円になる場合、源泉徴収された税額は年末調整または還付申告で戻ります。178万円を超える場合は、全勤務先の給与を合算して求めた年税額と、すでに源泉徴収された金額との差を精算します。
還付金が振り込まれるまでの目安は、「確定申告の還付金はいつ?」にまとめています。
178万円と、扶養の収入基準は別に確認する
178万円は、給与所得控除と基礎控除だけで、給与を受け取った本人の所得税等の年税額が0円になる目安です。
扶養控除・特定親族特別控除の収入基準は、その人を扶養する親などが控除を受けられるかを判断する基準です。特定親族特別控除は、19〜22歳の親族が対象です。掛け持ちの場合は、いずれも全勤務先の給与収入を合計して判定します。
| 給与収入だけの場合 | 2025年分 | 2026年分 2027年分 |
|---|---|---|
| 基礎控除(最大) | 95万円 | 104万円 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 |
| 本人の所得税等の年税額が0円になる目安 (給与所得控除・基礎控除のみ) | 160万円 | 178万円 |
| 扶養親族と認められる上限 | 123万円 | 136万円 |
| 特定親族特別控除の対象になる上限 (控除額は所得に応じて段階的に減る) | 188万円 | 197万円 |
表の2026年・2027年分の欄の金額は、その2年分に適用されます。2028年分以後は基礎控除と給与所得控除の最低保障額が変わるため、その年分の金額を確認します。
所得税等が0円でも、住民税がかかる場合がある
所得税等の年税額が0円でも、住民税がかからないとは限りません。住民税は、所得税と控除や非課税基準が異なります。
住民税の非課税基準は自治体や扶養人数によっても異なります。178万円は住民税の非課税基準ではありません。住民税については、対象年度の住民税を担当する市区町村の案内を確認してください。
住民税の申告が別に要るとき
確定申告のデータは市区町村へ送られるため、確定申告をした人は、原則として住民税の申告を別に出す必要がありません。確定申告をしない場合でも、給与だけの掛け持ちで、すべての勤務先が給与支払報告書を市区町村へ提出していれば、住民税の申告は原則不要です。
給与支払報告書が提出されない場合や、給与以外に20万円以下の所得があり、所得税の確定申告をしなかった場合は、住民税の申告が必要です。20万円の申告不要制度は所得税の決まりで、住民税にはありません。どこへ何を出すかは、「住民税の申告だけ必要な人は?」で説明しています。
副業給与の普通徴収は、市区町村によって取扱いが異なる
給与にかかる住民税は、原則として主たる給与を支払う勤務先が、給与から差し引いて納める「特別徴収」です。一方、副業の給与分だけを本人が納める「普通徴収」にする取扱いを認めていた自治体の中にも、その取扱いを見直すところがあります。
朝霞市は令和7年度から、門真市は令和9年度から、複数の勤務先の給与にかかる住民税を主たる勤務先で特別徴収する取扱いを案内しています。変更時期は自治体ごとに異なります。
副業の給与を普通徴収にできるか、取扱いがいつ変わるかは、その年度の1月1日現在の住所地の市区町村で確認します。掛け持ち分の収入が主たる勤務先にどう伝わるかは、「副業と住民税の通知書」で説明しています。
源泉徴収票を確認し、4つの手順で申告する
給与だけの申告なら、会計ソフトや帳簿は通常必要ありません。国税庁の確定申告書等作成コーナーで、源泉徴収票と必要な控除の内容を入力して申告書を作れます。
| 源泉徴収票の欄 | 確認すること |
|---|---|
| 支払金額 | 給与収入の金額。手取り額ではありません |
| 源泉徴収税額 | その源泉徴収票に反映された所得税等の金額 |
| 摘要 | 現在の勤務先が前職分を含めて年末調整した場合は、前職の支払金額、源泉徴収税額、勤務先名など |
- 申告する年分の源泉徴収票をそろえる
源泉徴収票に記載された年分を確認し、確定申告書等作成コーナーでも同じ年分を選びます。2026年分は2026年1月1日から12月31日までの所得で、通常は翌2027年に申告します。過去分を申告するときは、その年分の控除額で計算します。
年の途中で辞めた勤務先や、同時に掛け持ちしていた勤務先の分も含めます。現在の勤務先が前職分を通算しているか不明なら、源泉徴収票の摘要欄を確認し、分からない場合は給与担当者へ尋ねます。源泉徴収票がない場合の対処は、「源泉徴収票がもらえない場合」で説明しています。
- 源泉徴収票の内容を入力する確定申告書等作成コーナーで、源泉徴収票の内容を入力します。現在の勤務先の源泉徴収票の「支払金額」に前職の給与が含まれていれば、前職の源泉徴収票は別に入力しません。
- 計算結果を確認する還付額が表示された場合は、本人名義の受取口座を入力します。納付税額が表示された場合は、納付方法と期限を確認します。還付額も納付税額も0円なら、受取口座の入力や納付はありません。
- 申告書の提出が必要かを確認する
還付額も納付税額も0円の場合は、所得税等の年税額自体が0円なのか、源泉徴収税額を差し引いて0円になったのかを区別します。
170万円の例で源泉徴収税額も0円なら、申告義務も還付もありません。
一方、年税額があり、源泉徴収税額と同額になっている場合は、20万円の条件やその例外を確認します。条件によっては、追加納付が0円でも申告義務が残ります。
申告義務がある人、または還付を受けたい人は申告書を提出します。申告書はマイナンバーカードを使い、国税庁の電子申告システム「e-Tax」で送信するほか、印刷して郵送または持参できます。
納税になる場合は、申告書を送信しただけでは納付は完了しません。選んだ方法で納期限までに納めます。
申告義務がなかった年の還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。
申告義務があるのに期限を過ぎた場合は、できるだけ早く期限後申告をします。無申告加算税や延滞税などの扱いも確認します。
ひとりで進めにくい場合は、市役所や税務署の申告相談を利用する方法もあります。
よくある質問
掛け持ちしたら、年末調整はどっちのバイト先に出せばいいですか?
「給与所得者の扶養控除等申告書」は、勤務先のうち1か所に提出します。この申告書を提出した勤務先から受け取る給与が「主たる給与」です。同時に2か所へは提出できません。
提出していない勤務先の給与は、税額表の「乙欄」で源泉徴収され、原則としてその勤務先では年末調整されません。前職給与を通算する条件は、本文の年末調整の章で説明しています。
2か所目の給与が20万円以下なら、確定申告しなくていいですか?
年末調整されなかった給与収入と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要になる場合があります。20万円を超えても、申告すると還付になる人は申告義務の対象から除かれます。医療費控除などで確定申告をする年は、20万円以下の給与も申告します。住民税の申告が必要かは別に確認します。
確定申告をしないと、掛け持ちが本業の会社にバレますか?
確定申告をしなくても、勤務先に知られることはあります。市区町村は、各勤務先から提出される給与支払報告書で給与を把握します。給与分の住民税は、主たる勤務先が給与から差し引いて納める「特別徴収」が原則です。副業給与を、自分で納める「普通徴収」にできるかは、自治体によって取扱いが異なります。その年度の1月1日現在の住所地の市区町村で確認してください。
過去の分は今からでも申告できますか?
申告義務がなかった年の還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。申告義務があった年は、期限を過ぎていても速やかに期限後申告をします。対象年の源泉徴収票が手元にない場合は、源泉徴収票がもらえない場合の対処を確認してください。
申告が必要なのにしないままだと、どうなりますか?
納める税額がある場合は、本来の税額に、期限までに申告しなかったことに対する無申告加算税や、納付が遅れた期間に応じた延滞税が加算されることがあります。無申告加算税は、税務調査の通知前に自分から申告すれば5%です。通知を受けたあとはさらに高くなり、過去の無申告の状況によっても変わります。
法律で定められた申告期限(法定申告期限)から1か月以内に自分から申告し、税金も本来の納付期限までに納めるなど一定の条件を満たす場合は、無申告加算税はかかりません。
一方、申告すれば還付になる人は申告義務の対象から除かれますが、還付申告をしなければ納め過ぎた所得税等は戻りません。
掛け持ちすると、社会保険はどうなりますか?
社会保険は税金と仕組みが別です。2か所で働く場合の加入は、収入、勤務時間、勤務先の規模などで決まります。勤務先か年金事務所に確認してください。
2か所とも加入要件を満たした場合は、要件を満たした日から10日以内に、本人が「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所へ提出して主たる事業所を決めます。保険料は2か所の報酬を合算して決まり、各勤務先がそれぞれの報酬額に応じて負担します。
まとめ
20万円は申告要否を判断する条件の1つで、超えただけで確定申告が必要とは限りません。
その年の源泉徴収票をそろえ、前職分が現在の勤務先の年末調整に通算済みかを確認します。確定申告書等作成コーナーで給与を重複なく入力します。還付になる場合は受取口座を指定し、納税になる場合は納付方法を選んで期限までに納めます。
追加納付が0円でも、年税額と源泉徴収税額が同額の場合は申告義務が残ることがあります。170万円の例のように年税額自体が0円の場合とは分けて判断します。
※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年10月)の情報です。制度や金額は変わることがあります。個別の判断に迷うときは、税務署や税理士に相談してください。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.1900(給与所得者で確定申告が必要な人)
- 同 No.2030(還付申告)
- 同 No.2674(中途就職者の年末調整)
- 同「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」
- 同「家族と税」
- 同「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
- 同「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 同「キャッシュレス納付」
- 同 No.2024(確定申告を忘れたとき)
- e-Gov法令検索「地方税法」
- 朝霞市「給与所得が複数ある場合の住民税の特別徴収の徹底」
- 門真市「2か所以上の給与所得がある場合の住民税の徴収方法」
- 日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」
- 国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和8年分)」

