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住民税は引っ越したらどこに払う?前の市から納付書が届く理由

住民税はその年の1月1日に住んでいた市が1年分を課税し、住民票を移せば二重課税はないと示す図

前の市が送ってくるのは、1月1日にそこに住んでいたから

国内で引っ越しても、住民税がなくなることはない。

「前に住んでいた市から住民税の納付書が届いた」という電話が、毎年ありました。私は市役所の税務担当として、住民税の課税業務に携わっていました。引っ越し前後の2つの市から二重に課税されない理由や、市役所が書類を正しい市へ回送する仕組み、引っ越した年に必要な手続きを解説します。

この記事でわかること

  • 基準日は「賦課期日」で毎年1月1日。年の途中で引っ越しても納付先は変わらず、新しい市から納税通知書が届くのは翌年6月から
  • 年末年始の引っ越しは、住み始めた日が1日違うだけで課税する市が変わる。12月中に住み始めていれば、届け出が1月でも新居の市が課税する
  • 住民票を正しく異動していれば新旧2つの市から課税されない。ただし前の市に家や事業所を残すと、住所がなくても家屋敷課税で均等割がかかる
  • 引っ越した年は、先に前の市へ転出届、次に新しい市へ転入届を住み始めた日から14日以内に出す

住民税は「1月1日に住んでいた市」が1年分課税する

住民税の基準日は「賦課期日」と呼ばれ、毎年1月1日です。その日に住んでいた市区町村が、前年の所得をもとに、その年度の住民税を1年分課税します。

たとえば3月に引っ越した場合、その年度の分はすべて前の市に納めます。自分で払う人には、6月に前の市から納付書が届きます。納付書には「市民税・県民税」と書かれていますが、住民税のことです。住民税は年4回(多くの市区町村で6月・8月・10月・翌年1月)に分けて納めます。

ただし税額が均等割額以下のときは、6月に全額を1回で納めます(地方税法第320条)。給与から天引きされる分は、会社がそのまま前の市へ納めます。新しい市から納税通知書が届くのは、翌年6月からです。

「もう住んでいないのに」と思っても、これは間違いでも行き違いでもありません。

基準は届け出の日ではなく、住み始めた日

1月1日にどちらの市に住んでいたかは、転入届を出した日ではなく、実際に住み始めた日(届け出に書く異動日)で決まります。

たとえば、1月2日に新居に住み始めて、転入届を1月8日に出したとします。この場合、1月1日の時点ではまだ前の家に住んでいたので、その年度の住民税は前の市が課税します。逆に、12月のうちに住み始めていれば、届け出が1月になっても、1月1日の住所は新居です。

年末年始の引っ越しでは、住み始めた日が1日違うだけで課税する市が変わります。届け出のときは、異動日を実際のとおりに書いてください。

日付の組み合わせは、次のとおりです。

住み始めた日 → 転入届の日1月1日の住所その年度の住民税
1月2日 → 1月8日前の家前の市が課税します
12月20日 → 12月25日新居新しい市が課税します
12月20日 → 1月8日新居新しい市が課税します届け出が期限を過ぎても、課税は住み始めた日で決まります

転居後の住所へ住民票を移していれば、住み始めた日をもとに課税する市が決まります。住民票と実際の住まいが違うときは、生活の本拠をもとに課税する市区町村が個別に決まります。

二重に課税されない仕組みと、例外の家屋敷課税

1月1日の住所は1か所だけなので、住民票を正しく異動していれば、新旧2つの市が同じ年度分を課税することはありません。

住民票を移していないと、両方の市から通知が届くことがあります。この場合、実際に住んでいる市が課税すれば、住民票のある市は課税できないと地方税法第294条第3項・第4項で決まっています。市どうしで連絡し、どちらの市が課税するかを確認する仕組みです。

今年度分の納付書は前の市から、翌年度分は新しい市から届きます。

家や事業所を残したまま引っ越したとき

前の市に、自分や家族がいつでも住める家や、事務所・事業所を残している場合は、住所がなくても均等割だけが課税されます。

家屋敷課税と呼ばれる扱いで、根拠は地方税法第294条第1項第2号です。人に貸している家や、生計が別の家族が住んでいる家は対象になりません。金額は市区町村によって違い、たとえば鳥取市は年4,500円です。家屋敷課税は均等割だけで、森林環境税はかかりません。森林環境税は、日本国内に住所がある人にかかる国税だからです。

鳥取市は、該当する人に申告書の提出を求めています。市区町村では家屋敷の状況を把握しきれないため、自動的に通知が届くとは限りません。均等割だけなので、6月の納付書で全額をまとめて納めます。

どちらの市に納めるか分からないとき

同じ年度分の納付書が2つの市から届いたときは、まず家屋敷課税に当てはまるかを確かめます。当てはまらなければ、どちらかの市の担当課に連絡してください。

両方に納めてしまっても、納めすぎた分はあとから振り込まれます。課税する権利のない市に納めた分は過誤納金にあたり、市区町村は遅滞なく還付しなければならないと地方税法第17条で決まっています。ほかに未納の税金があるときは、先にそちらへ充当されます(同法第17条の2)。市区町村から過誤納金の還付通知が届いたら、その書類に振込先の口座情報を記入して返送してください。

前の市の分が払えないとき

引っ越しても、前の市に課税された住民税の納付義務は残ります。放置すれば督促状も届きます。引っ越しを理由にした減免はありません。

ただし、災害にあった、失業した、収入が大きく減ったといった場合に、減免や徴収猶予の制度を設けている市区町村があります。要件は自治体ごとに違うので、納めるのが難しいときは分割も含めて早めに担当課へ相談してください。督促状が届いたあとの流れは、「住民税の督促状が届いたらどうするか」に書きました。

市役所の実務。書類は正しい市へ「回送」されている

会社が提出する給与支払報告書や、税務署から送られる確定申告のデータには、引っ越し前の住所が記載されていることがあります。書類を課税システムへ取り込む段階で、住民票との住所の違いが見つかります。

そうした書類は、課税する権利のある市区町村へ送り直します。実務では「回送」と呼んでいました。住民票のシステムには引っ越しの前後の住所が記録されているので、その履歴をたどって送り先を確かめます。

私のいた市役所では、1月1日に市内に住んでいなかった人の書類を回送してから、毎年の確定申告の処理を始めていました。件数は年200件ほどでした。

住民票を移さず会社にだけ新しい住所を伝えると、市区町村は書類の正しい回送先をすぐに特定できません。書類に書かれた住所と住民票の住所が一致せず、確認に時間がかかります。それでも最終的には課税する権利のある市へ届きます。国内で引っ越した場合も、1月1日時点の住所をもとに課税する市区町村が決まります。

引っ越した年にやること

やることは、納め方によって違います。

  • 給与から天引きの人(特別徴収)
    住民税の手続きは要りません。天引きは変わらず続き、会社が前の市区町村へ納めます。ただし、勤務先には住所変更を届け出てください。
  • 自分で納付書で払う人(普通徴収)
    前の市の納付書で、そのまま納め続けます。転出届と転入届を出していれば、前の市は納付書を新しい住所へ送るのが基本です。ただし異動の時期によっては、前の住所へ届くことがあるので、郵便局で転送の手続きもしておいてください。私が窓口にいたころは、郵便を転送したのに納付書が届かないという相談はありませんでした。

引っ越しの届け出(納め方に関係なく共通)

  • 届け出の順番
    先に転出届を前の市区町村へ、次に転入届を新しい市区町村へ出します。転出届が済んでいないと転入届は受け付けてもらえません。
  • 期限
    転出届は住民基本台帳法では引っ越す前に出すものですが、引っ越したあとでも市区町村で受け付けてもらえます。転入届は住み始めた日から14日以内に出すため、引っ越し後に転出届を出す場合も、転入届より先に済ませてください。異動日には、住み始めた日を書いてください。
  • 同じ市区町村の中で引っ越したとき
    転出届と転入届ではなく転居届を出します。期限は転入届と同じ14日以内です(住民基本台帳法第23条)。課税する市区町村も納付先も変わりません。
  • オンラインでできる手続き
    マイナンバーカードがあれば、転出届はマイナポータルから出せて、窓口に行かずに済みます。転入届は窓口で出しますが、来庁予定日は事前に市区町村へ伝えられます。

納付書が届かないとき

郵便の転送は、申し込みから1年で切れます。これから納期限を迎える住民税があり、郵便の転送期限が近いときや納付書が届かないときは、前の市区町村で送付先を変更できます。

問い合わせ先は、その年の1月1日に住んでいた市区町村の担当課です。引っ越し先の市区町村ではありません。

引っ越しと同じ時期に会社を辞めたとき

会社を辞めると、給与からの天引きは続きません。変わるのは納め方だけで、納める先は1月1日に住んでいた市のままです。

辞めた月によって、残りの税額の引かれ方が違います。1月1日から4月30日までに辞めた場合は、残りの税額を最後の給与や退職手当からまとめて引きます。本人の申し出は要りません(地方税法第321条の5第2項)。5月31日までに支払われる給与や退職手当で引ききれない分は、納付書で納めます。

5月中に辞めた場合は、その年度の天引きが5月で終わるので、残りの税額をまとめて引くことはありません。

6月1日から12月31日までに辞めた場合は、本人が申し出ればまとめて引いてもらえます。申し出なければ、残りは自宅に届く納付書で納めます。

転職先でも天引きを続けたいときは、前の会社と転職先の両方に伝えてください。前の会社が作った異動届出書を転職先が引き継いで市区町村へ出します。この引き継ぎで起きやすい行き違いは、「退職・転職したときの住民税」に書きました。

ふるさと納税のワンストップ特例を出している場合

ワンストップ特例の申請書を出したあとに引っ越した場合は、別の手続きが要ります。寄附した自治体ごとに、寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書を翌年1月10日必着で出します。

この変更届は、翌年1月1日までに住所や氏名が変わったときに必要です。出さないとワンストップ特例が無効になり、確定申告をしないと寄附金控除を受けられません。ほかに無効になる条件は、「ふるさと納税のワンストップ特例が無効になるとき」で説明しています。

住民票は、引っ越したら早めに移してください。住民税の書類の確認に時間がかかるだけでなく、証明書の発行や給付の案内など、暮らしの手続きにも影響します。

海外へ引っ越す場合

件数は多くありませんでしたが、海外へ引っ越す人からも相談を受けていました。考え方は国内と同じで、基準は1月1日です。

1年以上の予定で海外に住み、1月1日の時点で日本に住所がなければ、その年度の住民税はかかりません。逆に、1月2日に出国しても、1月1日に住所があれば、その年度分は全額かかります。短期の出張や旅行では日本の住所がそのまま残るので、住民税もかかり続けます。

すでに課税されている住民税は、出国しても納付義務が残ります。出国前に納め切るか、代わりに納めてもらう納税管理人を届け出てから日本を離れてください。

その年度分の税額が決まるのは6月です。出国が6月より前でも、納税管理人を届け出ておけば、その人が納付書を受け取れます。

よくある質問

引っ越したのに、前の市から納付書が届きました。払う必要がありますか?

あります。その年度の住民税は、1月1日に住んでいた市区町村が課税する決まりで、間違いではありません。納付先も前の市のままです。

新しい市と前の市、両方から住民税が来ることはありますか?

住民票を実際の住所に合わせていれば、同じ年度分が両方から来ることはありません。今年度分の納付書は前の市から、翌年度分は新しい市から届くため、二重課税ではありません。ただし前の市に住める家や事務所・事業所を残している場合は、住所がなくても均等割だけがかかります(家屋敷課税)。それに当てはまらないのに同じ年度分が重なって届いたときは、どちらかの市の担当課に連絡してください。

同じ市区町村の中で引っ越した場合は、住民税はどうなりますか?

変わりません。課税するのは同じ市区町村で、納付先もそのままです。出す届け出は転出届と転入届ではなく転居届で、期限は住み始めた日から14日以内です(住民基本台帳法第23条)。届け出をしていれば、そのあとの納税通知書は新しい住所に届きます。

住民票を移していません。住民税はどうなりますか?

原則は住民票のある市区町村が課税します。ただし、住民票上の住所と居住地が違う場合は、生活の本拠をもとに課税する市区町村が個別に決まり、居住地の市が課税することもあります。書類の確認に時間がかかり、手続きも増えるので、住民票の住所は実際の居住地に合わせて変更してください。

海外転出のとき、住民税はどうなりますか?

1年以上の予定で海外に住み、1月1日に日本に住所がなければ、その年度分はかかりません。すでに課税されている住民税は、出国しても納付義務が残るため、出国前に納め切るか、納税管理人の届け出をしてください。

まとめ

住民税は、その年の1月1日に住んでいた市区町村が1年分を課税します。年の途中で引っ越しても納付先は変わらないので、前の市から納付書が届いても間違いではありません。基準は届け出の日ではなく、実際に住み始めた日です。

引っ越した年は、住み始めた日を異動日として転出・転入を届け出て、郵便の転送手続きもします。給与から天引きの人は勤務先へ住所変更を届け出ます。ふるさと納税のワンストップ特例を申請したあとに引っ越した人は、翌年1月10日必着で各自治体へ変更の届け出が要ります。納付書が届いたら、前の市のものでもそのまま納めてください。

※私は税理士ではありません。掲載内容は執筆時点(2026年9月)の情報です。届け出や納付の運用は自治体によって異なる場合があります。個別の状況は、お住まいの市区町村の担当課にご確認ください。

参考:総務省「個人住民税」横浜市青葉区「転出したら住民税は、どこの市区町村に支払うのでしょうか?」鳥取市「鳥取市内に住所はない(単身赴任など)が、家族等が住むための家屋敷等はある方へ」大阪市「減免・納税の猶予・救済制度」港区「転出入で住所を変更した場合、住民税はどこに納めるのですか」e-Gov法令検索「地方税法」e-Gov法令検索「住民基本台帳法」さいたま市「市税等を誤って二重に納付してしまいました。どうしたらよいですか。」千葉市「市税過誤納金等の還付・充当」

この記事を書いた人

たっくー

たっくー

元税務担当
確定申告受付1,000件以上
投資14年

元・自治体職員。税務の窓口で確定申告を1,000件以上受け付けてきました。今は会社員で、副業(ネットショップ・ブログ/いちばん売れた年で814万円)と投資14年の実体験があります。この両方をもとに、副業とお金のリアルを書いています。

※個別の税務相談は税理士・税務署へ。

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